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防衛省が「多目的無人艇」開発、“ゲーム・チェンジャー技術“に踏み込む

防衛省が「多目的無人艇」開発、“ゲーム・チェンジャー技術“に踏み込む

多目的USV運用構想図(防衛省提供)

防衛省は2024年度に無人アセット防衛能力の研究開発に本格着手する。戦闘支援型の多目的USV(無人艇)の研究や、無人水陸両用車の開発に新たに取り組む。無人兵器は人工知能(AI)や量子通信技術と同様、将来の戦い方を一変させる可能性があるゲーム・チェンジャー技術の一つとされる。これまで同省の研究は飛行ロボット(ドローン)の研究購入が中心だったが、これを大きく踏み込む。

戦闘機や戦車とは異なり、無人兵器は自国の兵士を失う心配がないため、人員確保に悩む自衛隊にはメリットが大きい。また、小型化が容易でレーダーなどに見つかりにくく、人体では耐えられないレベルの激しい動きや、過酷な使用環境にも対応できる。単独での利用法と併せて、有人兵器の補完用に使う戦術も可能となる。

防衛省は24年度予算の概算要求で、戦闘支援型多目的USVは245億円、水陸両用車開発は211億円をそれぞれ計上した。戦闘支援型USVは敵にギリギリまで接近できるよう船体はステルス性の細長い形状とし、警戒監視や対艦ミサイル発射などの機能を選択的に搭載できるようにする。自律航行のほか、護衛艦など有人艦艇や陸上施設から遠隔操縦して航行できる機能も持たせる。島しょ防衛戦では相手国側がミサイルなど先制攻撃で島を占拠し、制空権を奪われた中で奪還部隊が向かう事態も想定され、こうしたケースも念頭に置く。

無人水陸両用車は洋上に頭部だけを露出して海面すれすれを走行し、島しょ部の海岸に上陸するシーンを想定。どのくらいの水深まで行動可能か、どの高さの岩なら乗り越えられるかといった研究は20年度から始めており、今回、試作車と実用化研究に着手する。

日刊工業新聞 2023年09月13日

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