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ソフトバンクが営業・企画人材向けAI研修を拡充する理由

ソフトバンクが、営業や企画など非エンジニア職向けの人工知能(AI)研修の拡充を進めている。2021年度からは、全社員向けにAIの基礎的な知識を学べるeラーニングを展開。22年度には、アプリケーション学習やワークショップを通じて、より実践的なAIの活用スキルを学べる研修も始めた。

「人はAIと聞くと、夢物語のように何でも出来ると思いがち。ただ、本来はAIにも得意なこと不得意なことがある。それを分かった上で進められるかどうかは、ビジネスのスピードの根幹に関わる」。こう力を込めるのは、採用・人材開発統括部人材開発部の岩月優部長。

同社は、AIをビジネスで活用する上で、エンジニアや研究者だけがAIの知識を持つだけでは不十分と認識。企画や営業を含めた社員全体のAIの知識・実践力を高めることで、ビジネスの効率性を高める。

既に成果もある。全社向けのeラーニングでは、8000人が受講。日本ディープラーニング協会が実施するAIの活用リテラシー(活用能力)を問う資格試験「G検定」も、資格取得者が「増えてきた」(岩月部長)。ソフトバンクは研修拡充以前から、資格取得者へ奨励金を支払ってきた。同検定の合格者数は22年12月時点で、累計1537人に上る。

ただ、ソフトバンクのAI研修で注目すべきなのは、社員の“手挙げ”による参加が前提となっている点だ。「本人が学びたいと思った時が一番学習効率が高まる」(岩月部長)ため、社員の自主性を尊重する。

ソフトバンクは、通信料の値下げ影響で主力の個人向け通信事業が伸び悩む中、金融や電子商取引(EC)といった非通信事業、法人事業の拡大に注力する。そうした分野の拡大においては「多様なデータを活用していくことが重要で、AIはキーテクノロジーの一つになる」(同)。社員のAIリテラシーの底上げで、非通信や法人事業の拡大につなげたい考えだ。

日刊工業新聞 2023年02月21日

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