東洋大・青学・筑波技術大…広がる「大学SDGs」、教育×社会貢献の変革期待
大学で国連の持続可能な開発目標(SDGs)の活動が広がっている。私立の総合大学は学生の関心に合わせた幅広い課外活動を行う。社会課題解決の意識醸成に有効と見て、正規の授業科目とも連動させている。中小規模の国立大学が手がける、特色ある教育をSDGsに重ねた取り組みも注目される。(編集委員・山本佳世子)
東洋大学はSDGsに積極的な大学の一つだ。2021年にSDGs行動憲章を制定、22年に全学部生対象の科目「SDGs実践講座」を開始した。
学生個人・団体に対し学長が認定する「東洋大学SDGsアンバサダー」はユニークだ。4キャンパス計約90人の学生が「環境問題」「食品ロス対策」「被災地支援・防災」などのグループで活動する。矢口悦子学長は「学びを通じて社会課題の解決を考え、アイデア実現のため大学が資金や支援人材などで応援する」と説明する。
学生支援として職員や組織を配置することも多い。同大では「社会貢献センターボランティア支援室」が担当となり、教職員の研究や働き方改革をSDGsに広げた「SDGs推進センター」との連携もにらんでいる。
青山学院大学ではボランティアセンターを改組した「シビックエンゲージメントセンター」が中心となっている。キリスト教精神に基づく学外奉仕活動の正課科目「サービス・ラーニング」と連動させている。
活動支援の「ボラサポ」はボランティアを含むSDGs企画を資金面で後押しする。学部単位の活動が盛んなのも特色で、飢餓ゼロに向けた昆虫食イベント、フェアトレードコットンのタオル開発などに取り組む。
一方、中小規模の国立大学では、独自性を生かした人材育成をSDGsに重ねている。電気通信大学と東京農工大学、東京外国語大学は大学院博士後期課程「共同サステイナビリティ研究専攻」を運営する。
文系の地域研究と理系のデータ解析など、異なる研究手法を組み合わせてサステナビリティー(持続可能性)に関する高度人材を育成する。ケニアや南スーダンなど多様な国の学生を受け入れ、国際的視野でのSDGsとなっている。
学生はすべて聴覚・視覚の障がい者であり、職員にも聴覚・視覚障がいを持つ人が多い筑波技術大学も、個性を反映している。点字と連動したツールによるプログラミング教育などが特徴だ。学内の「障害者高等教育研究支援センター」が支援システム開発などを手がける。
同センターを事務局とする「日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク」(PEPNet―Japan、ペップネットジャパン)は、全国に点在する聴覚障がい学生と所属大学にノウハウを伝授。学生サポートブックの作成・配布や、支援者のスキル取得の教材を提供している。
SDGsは切り口も活動主体も多様で、教育と社会貢献が直結する点で大学が推進するのに向いている。さらに新たな“SDGsイノベーション”も期待されそうだ。