電通大・農工大・外語大が取り組む文理融合研究のユニークさ
日本の援助で開発途上国に設置した先端機器が、壊れたままといった経済・技術支援の課題はしばしば耳にする。地域社会と技術の専門家で手を組もう―。そんな切り口で2019年度にスタートしたのが、電気通信大学と東京農工大学、東京外国語大学で設置した大学院博士後期課程「共同サステイナビリティ研究専攻」だ。東京外大が強い地域研究と電通大のデータ解析など、異なる研究手法を組み合わせてサステナビリティー(持続可能性)の高度専門人材育成を進めている。
この研究科の特徴は情報通信技術(ICT)やロボティクスの電通大、食料・エネルギー、ライフサイエンスの東京農工大、地域研究や開発経済学の東京外大の専門を掛け合わせた文理融合の博士教育だ。文系の現地調査に理系の数値解析を導入する国際人の養成、といったイメージだ。
電通大の山本佳世子教授の場合、専門は空間情報科学だ。防災や都市計画で通常なら最先端技術の活用に目が着くが、「途上国でも可能な公開の衛星画像を使うなど工夫がいる」という。これまでも留学生指導が多かったが、サステイナビリティ研究専攻では大使館推薦による南スーダンのほか、ケニアやパキスタンとさらに国籍が拡大。「3大学の間での議論は学生にも教員にも刺激的だ」と強調する。

「持続可能な開発目標(SDGs)は、国連のミレニアム開発目標(MDGs)の時代と比べて民間の役割が大きくなった」(東京外大の武内進一教授)。同大ならではの視点は大きく、「ビジネスと人権」といった切り口も光る。東京農工大の香取浩子教授は「課題解決に向けて、理系の方が強い論理の構築で、文系学生にアドバイスしている」。東京西部の3大学ゆえ、対面の行き来も容易だ。
博士号授与の研究例は、日本の地域社会における石炭から石油、脱炭素社会への変化や、政治的な国連の制裁がイラクの食料生産システムに及ぼした影響など。3大学かつ文理融合で、ユニークな事例は注目されそうだ。
