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SDGsで表彰、微生物の働きで植物の成長を促す「東京8」とは?

SDGsで表彰、微生物の働きで植物の成長を促す「東京8」とは?

東京8を与えてサハラ砂漠で野菜を栽培(アフリカのニジェール共和国)

太陽油化(東京都板橋区、石田太平社長)は3月、政府持続可能な開発目標(SDGs)推進本部(本部長=岸田文雄首相)主催の「ジャパンSDGsアワード」に選ばれた。SDGsに関連した表彰制度は数多くあるが、同アワードは企業や民間非営利団体(NPO)を問わず6者(2022年度)しか選出されない狭き門だ。

微生物の働きで植物の成長を促進する活性剤「TOKYO8(東京エイト)」の開発が栄誉につながった。廃棄物に由来する生物資源を循環利用して農産物の収穫量を増やす環境配慮に加え、途上国の貧しい農家の経済力向上に貢献できる潜在力も評価された。

同社は廃棄物汚泥処理事業を展開している。処理後の排水から微生物を抽出し、調合した液体が東京8だ。石田社長は「世界中から人と食材が集まる東京の汚泥には、他よりも多い1400群の微生物がバランス良く共存している」と強調する。一般的な肥料に比べても圧倒的に多い。

東京8を与えて育てたニンニク(右)

東京8を与えた土壌は微生物が活性化され、病害菌を抑えて農産物の成長を助ける。農薬や化学肥料の使用を減らせるだけでなく、原材料費がかからずにコストも安い。「ここ3年くらいで売れ始めた。サーキュラーエコノミー(循環経済)への関心の高まりが背景にある」(石田社長)と分析する。他にも有機農業志向や化学肥料の価格高騰も影響しているようだ。

東京8はアフリカ10カ国以上で実験導入が始まっている。雨が少なくて固い現地の土も東京8によって微生物が活性化すると柔らかくなり、通気性と保水力が高まる。実際に野菜の育ちが良くなった報告がある。食料の供給増加のほか、貧しい農家の収入アップが期待できる。化学肥料のように散布による健康被害の心配もない。

同社は東京8の原液を送り、アフリカの人が培養によって量を増やして販売するビジネスモデルを検討している。「我々が想像していなかった2重、3重の効果を与えられる」と期待を膨らませる。

日刊工業新聞 2023年06月16日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
記事で触れませんでしたが、アフリカの現地の方が「東京8」を作れるようになると、廃棄物も現地で処理できるようになります。食品廃棄物などを堆肥にする資源循環はあると思います。太陽油化はアフリカの貧困解決、さらに廃棄物処理による環境改善にも貢献しようと取り組んでいました。 著書『自然再生をビジネスに活かすネイチャーポジティブ』を発売しました。ビジネスと生物多様性の最新動向を知りたい方向けです。

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