環境対応を加速するキヤノン、複合機回収率低い欧米はどうする?
キヤノンは日米欧の3極で複合機やプリンターといったプリンティング事業の環境対応を加速する。使用済み複合機の回収や再生を手がける中核拠点のキヤノンエコロジーインダストリー(茨城県坂東市)で再生材料の使用率向上を推進し、欧州や米国に横展開する。海外では日本に比べて複合機の回収率が低いといった課題を乗り越え、製品ライフサイクル全体でグリーン変革(GX)を進められるかが問われる。(高島里沙)
キヤノンエコロジーインダストリーは、回収したプリンターや複合機、トナー、インクなどを再資源化するリサイクル事業と、新品同様の製品に再生するリマニュファクチャリング事業を手がける。同社では毎月約2500台の複合機を回収。使用済みの複合機は稼働年数や故障履歴、プリント枚数などのデータに基づいて、本体、部品、材料のどの部分を再利用するかを自動判定する。キヤノンデジタルプリンティングサプライ&サポート管理センターGX推進プロジェクトの村上歩チーフは「以前は人手による判定だったが、データを活用した自動判定を取り入れたことで効率が高まった」と語る。
回収品を再資源化する上で求められているのが鉄や非鉄、プラスチックなどの分別純度の向上だ。鉄の場合、分別純度を高めることで外部業者による買い取り価格も上昇する。20年には複写機を丸ごと破砕できるプレシュレッダーを、22年には鉄と銅を選別するロボットを導入した。
特にモーター内の銅の除去が求められる中、銅をピッキングするロボットの活用で銅の自動除去を実現した。従来、混合物解体品として業者に売却していた際は鉄純度が65%だったが、破砕・選別の徹底で同99%まで改善し、鉄の売却単価も向上している。
再生事業では原価低減に向けて再生部品の使用率を高めている。市場ニーズに合わせて、外装カバーや定期消耗品などの再生基準を見直し、規格を設定した。再生部品の保証と品質向上を徹底する。
キヤノンエコロジーインダストリーの取り組みを、欧州では独キヤノンギーセン(ギーセン市)が、米国ではキヤノンバージニア(バージニア州)がそれぞれ横展開している。日本と海外の大きな違いは複合機の回収率だ。国内全体の回収率は95%で、年間約7万台に上る。一方欧米では日本の3分の1程度にとどまる。
欧州では再生機の販売を前提に商談する国もあるなど要求が高いが、米国では新造機を好む傾向にある。現在グローバルでキヤノンの複合機に占める再生機比率は2―3%だが、2025年には5%に引き上げる。
また商慣習なども異なり、欧州では使用済み機械が販売会社経由で中古機市場に流れやすい。キヤノンデジタルプリンティングサプライ&サポート管理センターの加藤隆行所長は「中古機ではなく再生機にする方が、付加価値も高まり経済合理性が高い」と語る。まずは回収率向上を目指す方針だ。