実力益トン1万円視野、JFEが収益力向上へ迎える構造改革のヤマ場
JFEホールディングス(HD)は脱炭素化に向け収益力向上に注力し、2024年3月期連結業績予想について在庫評価影響などを除く鉄鋼事業の実力ベースのトン当たり利益を1万円と見込む。5月の前回予想から1000円の上方修正で、寺畑雅史副社長は日刊工業新聞社の取材に「鋼材需要の回復はやや遅れているが、鋼材販価の水準維持や高付加価値品の強化、構造改革によるコスト削減で達成したい」との考えを示した。
JFEHDは24年3月期連結業績で、一過性要因を除く実力ベースの事業利益を当初予想比350億円増の3150億円(前期比93・5%増)と予想している。
生産時の二酸化炭素(CO2)排出量が少なく、9月中に供給を始めるグリーン鋼材「ジェイグリークス」について「脱炭素に資する商品として(社会へのアピールや拡販に)ドライブをかけていきたい。価格が上がっても顧客が買いたいと思う機運を醸成する必要がある」と強調した。
構造改革は最大のヤマ場として、JFEスチール京浜地区(川崎市川崎区)の高炉を16日に休止することで、「23年度上期と同等の生産量を想定する下期は(全3地区の高炉の)稼働率が高まり、より強靱(きょうじん)な体制になる」とした。1基休止でJFEスチール単独の粗鋼生産能力を約13%削減する。
国内鋼材の需要は車生産回復で改善し、海外では段階的回復を見込む。鉄鉱石や原料炭など主原料の価格は落ち着いているが、電力代や輸送費などは上がり基調で為替の円安傾向も続く中、寺畑副社長は「原料価格などとの値差(スプレッド)を確保すべく、鋼材販価の水準を維持したい」と強調。価格転嫁が十分でない製品や諸物価上昇分もあり「(自動車など大口顧客向け)ひも付き価格の是正を継続する」とした。
京浜の高炉休止に伴う土地利用転換については「(強みである)大水深バースを活用し、水素を軸とする脱炭素拠点にという川崎市の土地利用方針に沿い、近く当社としての方針を示す」とした。当面は大水深バースなど先導エリアの開発となるが「(面積の大きい)その先の高炉跡地は公共に資する利用策を検討し、国や市とも協議する」と語った。
JFEの高炉は9月後半以降、7基体制となる。倉敷(岡山県)、福山(広島県)の両地区に計6基と西日本のウエートが高く、東日本は千葉地区(千葉市中央区)1基のみとなる。ただ、千葉には脱炭素関連の試験炉を複数設置する予定で、「研究開発機能の存在感を高めたい」としている。