日本製鉄・JFE・神戸製鋼…高炉3社の通期予想、原料安・ひも付き価格是正で利ざや改善
8日出そろった高炉鉄鋼3社の2024年3月期業績予想は厳しい需要環境にあって、原料価格の低下と大口顧客向け「ひも付き価格」の是正でマージン(利ざや)が改善しそうだ。日本製鉄、JFEホールディングス(ともに国際会計基準)は余剰生産能力を抑える構造改革の仕上げの年だが、足元の鋼材需要は「極めて低い水準」(日鉄)。各社は量より質を重視する戦略を進めており、日鉄と神戸製鋼所は当期利益などを上方修正した。
神鋼は24年3月期予想で経常利益を当初比150億円多い1450億円(前期比35・7%増)に修正。鋼材マージンの改善、電力事業での燃料価格影響を見込む。子会社の固定資産譲渡益増もあり、当期利益は200億円多い1200億円(同65・4%増)で過去最高を更新しそうだ。
各社の鋼材需要は自動車関連が回復する一方、建設案件先送りや中国市況低迷が続く。年間単独粗鋼生産量はJFEが当初比40万トン低い2460万トン程度、神鋼が10万トン低い610万トン程度に改めた。神鋼の勝川四志彦副社長は「21年度からの販価改善で損益分岐点を大幅に下げている。量が増えれば収益が広がる」とした。日鉄は当初予想の3500万トン程度を据え置いた。
23年4―6月期の1トン当たりの鋼材平均単価はひも付き価格是正でアップした。前年同期比で神鋼が10・0%、日鉄が2・4%、JFEが1・4%高まった。
生産能力を適正化するため日鉄の構造改革に続き、JFEは京浜地区(川崎市川崎区)の高炉休止を9月16日とすることを決めた。固定費の圧縮などコスト削減が進みそうだ。
年間配当は日鉄が従来予想比10円増の150円以上(前期は180円)とした。JFEは前期比20円増の100円、神鋼は同50円増の90円とした。
日刊工業新聞 2023年08月09日