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43の企業を擁するJFEスチール、“量から質へ”のグループ戦略

43の企業を擁するJFEスチール、“量から質へ”のグループ戦略

水島合金鉄公式サイトより

JFEスチールは鉄鋼を軸に、資源・原材料や加工、物流など周辺分野で計43のグループ企業を擁する。鋼材内需の先細りを見据えて“量から質への移行”を打ち出す中、グループの事業は選択と集中により収益基盤を強固にする一方で「成長を期待できる分野・事業へ資源配分をシフトする」としている。

注目されるのが、4月1日に迫ったJFEミネラル(東京都港区)、水島合金鉄(岡山県倉敷市)、JFEマテリアル(富山県射水市)の統合だ。本拠地が離れていた3社だが、2050年の脱炭素に向け、電動車用の機能材料などでビジネスチャンスを果敢に獲得するため1社になる。

水島合金鉄はマンガン系合金鉄や窒化ホウ素、JFEマテリアルはクロム系合金鉄や有価金属回収を手がける。この2社を、鉱産品や鉄鋼スラグなどを扱うJFEミネラルが吸収合併し、存続会社となる。企業規模を拡大し、開発や販売などの経営資源に柔軟性、機動性を持たせて「24年度には、20年度比で倍以上の増益を目指す」(JFEスチール)としている。

統合新会社で一層注力する機能材料は、気候変動や自動車の電動化など社会環境の変化に対応した技術革新を“黒子”として支える。JFEミネラルの主力製品、ニッケル超微粉はJFEスチール千葉地区(千葉市中央区)で生産されており、パソコンやスマートフォン用の積層セラミックコンデンサー向けで高いシェアを持つ。

水島合金鉄が扱う窒化ホウ素は優れた熱伝導性と絶縁性を有しており、パワーモジュール放熱フィラーなど電子部品に生かされる。独自の高温焼成技術を強みとして、顧客の拡大を見込んでいる。

JFEスチールは旧川崎製鉄、旧日本鋼管(NKK)時代の1980年代後半から新素材事業を高付加価値分野と位置付け、グループ内のオープンイノベーションを進めてきた。その他グループ企業も今後の事業選択で再編される可能性があるが、鋼材をベースに長年培われたモノづくりの技術、ノウハウの存在が脱炭素化で問われているのは確かだろう。

日刊工業新聞 2022年2月24日

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