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日本農業の課題を解決する切り札“スマート農業”

おすすめ本の抜粋「図解よくわかるスマート農業 デジタル化が実現する儲かる農業」

なぜいま“スマート農業”なのか

農業者100万人時代が近付く中、スマート農業の役割は今後一段と高まっていきます(図表)。

図表 日本農業が抱える課題

まず、1人当たりの農地面積が増えるチャンスを活かすためには、1人当たりの農作業の効率性を数倍に高めることが大事です。これまでも農業者は減少を続けてきましたが、それが必ずしも儲かる農業にはつながってきませんでした。なぜなら、従来と同じ作業体系では、例え農家1戸当たりの農地面積のポテンシャルが2倍になっても、2倍の時間を働くことはできないからです。そのため、営農を継続する農業者が受け皿になりきれない農地が耕作放棄地となってしまったのです。

スマート農業では農業者の作業の効率性が飛躍的に高まります。例えば自動運転トラクターを同時に3台動かせば、1人で1時間当たりに耕すことができる面積は3倍となります。また、作業支援型の農業ロボットを使えば、2人1組の作業を1人で行えるようになり、作業効率はおよそ1.5~2倍となります。

また、スマート農業は新規就農者の助けとなります。センサーを使ったモニタリング、生産管理アプリ、AI(人工知能) を使った診断、自動運転の農機やロボットなどは、ノウハウや操作技術の乏しい新規就農者の弱点を補い、即戦力とします。このようにスマート農業をうまく使って儲かる農業を実現できれば、早期に離農してしまうケースが減るとともに、新規就農者の数の増加につながると期待されます。これは、近年新たな制度が導入された外国人の農業者が日本の農業に早期に慣れる際にも役立ちます。

更にスマート農業は、従来は農業で十分に活躍することが難しかった人材にも貢献します。例えば、作業支援型の農業ロボットやアシストスーツは、豊富な経験を有するものの足腰が弱ってきたベテラン農家が第一線で活躍できる期間を延ばすことに役立ちます。自動運転農機で義務付けられている監視スタッフ(今後、遠隔での監視が認められる方向)やドローンパイロットでは、車いす利用者などの体が不自由な方でも活躍することができます。また、生産管理アプリを活用して、作業の見える化と作業内容のバトンタッチが容易になれば、働ける時間が限られている子育て中の女性でもパート形態で働くことができます。将来的に、農業を愛する者すべてが儲かる農業を行えるのが理想形です。

加えて、スマート農業は農産物の付加価値向上にも貢献します。高度に管理された施設園芸(植物工場を含む)では、消費者のニーズに合わせて高糖度の農産物や機能性成分を多く含む農産物を栽培しています。また、ドローンなどによるモニタリングデータを分析して施肥量・配合を変えることで、均質な商品を作ることも可能です。更に、スマート農業技術を使えば、栽培環境、生育状況、作業内容(施肥、農薬散布など)を見える化し、SNSやウェブサイト、もしくは店頭のデジタルサイネージなどを通して消費者、実需者に伝えることができます。これにより、安心・安全への配慮や品質向上に対する努力を消費者に訴求することができ、ブランド価値の源泉とすることができるのです。

Point
● 農業者が減ってもスマート農業で効率的な農業生産が可能に
● データ分析に基づく高度管理で農産物のブランド価値を向上
● 重労働から解放され、様々な人材が農業に参画可能に

(「図解よくわかるスマート農業」p.18-19より抜粋)

<販売サイト>
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<書籍紹介>
書名:図解よくわかるスマート農業 デジタル化が実現する儲かる農業
編者名:三輪泰史
著者名:日本総合研究所研究員
判型:A5判
総頁数:180頁
税込み価格:2,200円

<目次>
第1章 スマート農業をビジネスにする
第2章 農業ビジネスの始め方
第3章 スマート農業の導入ステップ
第4章 スマート農業の“匠の眼”
第5章 スマート農業の“匠の頭脳”
第6章 スマート農業の“匠の手”
第7章 スマート農産物流通
第8章 スマート農業を後押しする政策・支援策
第9章 スマート農業の追い風となるトピック

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