地域創生へ挑む千葉・銚子市、洋上風力で波及効果生む
千葉県銚子市は三菱商事と、同社が2028年9月から同市沖で計画する洋上風力発電所の商業運転を前に、地域創生に向けた取り組みを進めている。同社グループの事業基盤を活用し、同市の強みである漁業と観光産業を磨くとともに、洋上風力発電で雇用を創出するものだ。これにより人口減少などの課題を解決して地域創生を実現する。
銚子市は関東最東端に位置し、沖合に広がる大陸棚には北からの寒流と南からの暖流が交錯し、利根川の有機物を含んだ真水も流入することで、好漁場が形成されている。銚子漁港の水揚げ量は22年で約24万トンと12年連続で全国1位だ。
これらを生かした水産加工業や農業、江戸時代から盛んな、しょうゆづくり以外にも、日本一早い初日の出や日本ジオパークに認定される変化に富む海岸線、犬吠埼灯台などさまざまな魅力ある観光資源に恵まれる。三菱商事の岡部康彦産業DX部門副部門長は「いろいろな資源がある。これらを打ち出せれば、インバウンド(訪日外国人)など外から来る人も増やせる」と評価する。
ただ、人口は65年の9万1492人をピークに、現在は約5万6000人まで減少。22年の出生数は157人と少子高齢化が進む。自然減と都市部への流出が原因で、そのため産業の後継者不足が課題となっており、収入があり、やりがいも感じられる雇用を早急に創出する必要がある。
その中で21年に銚子地区で洋上風力発電の事業者に選定されたのが三菱商事だ。25年から送電線などの陸上工事に、27年から洋上工事に着手する。31基の大型風車を設置し、発電容量は40万3000キロワット。30年間にわたって同市沖で洋上風力発電事業を行う。年間の平均風速が毎秒7・0メートル以上と風況に恵まれ、水深20―30メートルの遠浅の海が続く着床式洋上風力発電に適した銚子沖の自然環境を生かすものだ。
同社は「中期経営戦略2024」で、エネルギー・トランスフォーメーション(EX)と、デジタル変革(DX)の一体推進による地域創生を成長戦略に掲げる。地域経済の活性化を目指すとともに、再生可能エネルギーを活用し、二酸化炭素(CO2)排出量の実質ゼロを目指す「銚子市ゼロカーボンビジョン」を掲げる同市と方針も一致する。
同社は35年ぶりとなる国内支店として22年に銚子支店を開設。23年6月に両者は地域創生で、同市と銚子商工会議所、三菱食品は食に関してそれぞれ連携協定を締結。同市の越川信一市長は「若手経営者が刺激を受け、さまざまなことにチャレンジしようとしている」と喜ぶ。岡部副部門長は「期待されていることをひしひしと感じている。責任も重い」と気を引き締める。
連携協定に基づく取り組みとして8月5、6の両日に開かれた「銚子みなとまつり」では、対話アプリケーション「LINE」で観光情報を提供する観光パスポートを導入。自らみこしも担いだ岡部副部門長は「最後の盛り上がりはすごかった。あらためて銚子市のポテンシャルを感じた。このようなにぎわいを日頃からつくれるようにしたい」と言葉に力を込める。