丸紅・三井物産…総合商社がクリーンエネ投資加速、求められる事業見直し
総合商社がクリーンエネルギーへの投資を加速させる。丸紅は今後10年で、英国の洋上風力発電などに協業企業と合わせて約100億ポンド(約1兆7300億円)投資する方向で調整が進む。三井物産は2030年までに発電事業の再生可能エネルギー比率を20年3月期時点の14%から30%超に引き上げる。ただ、多額の資金を成長分野に振り向けるには強固な経営基盤が欠かせない。採算の低い事業からの撤退などポートフォリオの組み替えも求められる。(編集委員・田中明夫)
丸紅は洋上風力や水素といったクリーンエネルギーの投資について英国政府と覚書締結に向けた調整を進めている。住友商事も同国の洋上風力発電事業の拡大に協業企業と40億ポンド(約6920億円)投じる検討が進む。いずれも英国政府が明らかにした。
三井物産は26年3月期を最終とする3カ年の中期経営計画で、脱炭素社会への移行に向けた投下資本を約1兆円増額させる。天然ガスや再生可能エネルギーに加え、「(アンモニアといった)次世代燃料や還元鉄事業などの事業開発にも積極的に取り組み、新たなバリューチェーンの構築に努める」(堀健一社長)考えだ。
ただ、足元の事業環境は不安定さを伴う。資源高を背景に、商社の23年3月期決算は最高益の更新が相次いだが、24年3月期は市況の下落を受けて、大手7社全てが減益を見込む。
各社ともコロナ禍前に比べ、利益水準を切り上げたが、成長分野への大規模投資に対してはなお慎重な声が聞かれる。丸紅は、13年に約2700億円で買収した米穀物大手ガビロンを売却するなど近年は資産整理を進めたが、事業全体では「そろそろ(大規模投資へ)という気持ちと、規律を守って身の丈に合ったことをすべきという思いを戦わせながら良い案件に投資していきたい」(柿木真澄社長)とする。
三菱商事は、現中計でエネルギーシフトやデジタル化を中心に3兆円規模の投資を計画するが、「役割を終えた(事業からは)資金を回収して成長モデルに充てていく必要がある」(中西勝也社長)と低成長事業の見直しも進める。
クリーンエネルギーへの持続的な投資には、既存事業の撤退などポートフォリオの組み替えの継続もカギとなる。