日野自・三菱ふそう統合、6月に年初来高値も…海外訴訟など難局なお
日野自動車と三菱ふそうトラック・バスが2024年末に経営統合を目指すと発表してから2カ月が経過した。22年3月の不正発覚から低迷が続いていた日野自株は、株式市場で窮地を脱したとの見方から、6月に一時、年初来高値をつけた。一方で、日野自は豪州で2件目の集団訴訟を提起されるなど課題は多く、統合実現が難航することも予想される。(大原佑美子)
7月、両社の親会社であるトヨタ自動車、独ダイムラー・トラックを含む4社のメンバーが集まり、統合に向けたプロジェクトが始動した。日野自の野村達也最高戦略責任者(CSO)は「(最終契約を結ぶ)24年3月までに統合内容の協議を進めたい」と期待を込める。
今回の協業を市場はおおむね前向きに捉えたとみる一方で、東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストは「海外での訴訟など課題は多い」と指摘する。その一つがエンジン認証不正に起因する訴訟だ。
日野自は北米と豪州で合計3件の集団訴訟を提起されている。豪州での新たな訴訟について、具体的な請求金額は一切明らかにされていないもよう。23年4―6月期決算会見で中野靖最高財務責任者(CFO)は「(三菱ふそうとの)最終契約を結ぶ前には訴訟以外も含め潜在債務が明らかになる必要がある。なんとか24年春には状況が明らかになれば良い」とした。
日野自の経営統合発表資料には、エンジン認証不正問題に起因する海外の訴訟などで発生する金銭的負担の規模や判明するタイミング次第で、「当社株主の株式保有割合に著しい希薄化が生じる恐れがある」など経営統合の成否や条件面でのリスクの内容が複数記されている。杉浦シニアアナリストは「交渉が決裂し破談の可能性もある」とみる。
訴訟問題だけではない。統合後も「HINO」「FUSO」両ブランドを維持する見通しだが、「収益を上げるにはディーラーのリストラありき。本当に(拠点統合)するには10年タームでかかる」(杉浦シニアアナリスト)と難航を予測する見方がある。日野自と三菱ふそう合計で7割超のシェアを握るインドネシアでの販売は「日野自は住友商事、三菱ふそうは三菱商事が関わる。そこが一緒になるのは日本以上に大変なのでは」(自動車メーカー幹部)との声もある。
実現には複数のハードルが存在する大型再編構想。多くの関係者の思惑が複雑に絡み合う。