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相次ぐ不正に心配の声…トヨタ系部品各社の株主総会、終盤突入

相次ぐ不正に心配の声…トヨタ系部品各社の株主総会、終盤突入

株主からは脱炭素化や電動化への対応などについて高い関心が寄せられた(デンソーの定時株主総会会場)

トヨタ自動車グループの部品各社の定時株主総会が終盤を迎えた。21日に愛知製鋼が総会を開き、残すは22日のジェイテクトのみ。7社のうち4社が社長交代を実施した節目の総会では、脱炭素化といった自動車産業の大変革期への対応をはじめ、株主から幅広い質問が出た。グループで発覚した不正問題を受け、体質強化を求める声も。新体制には成長戦略に加え、課題や難局へのかじ取りが期待される。(編集委員・政年佐貴恵、名古屋・川口拓洋)

全体で最も関心の高かったのが、脱炭素化や電動化への対応と、変革の潮流の中で競争力を維持できるのか、といったテーマだ。

デンソーの総会では有馬浩二会長が、再生可能エネルギーへの切り替えなどの取り組みを紹介したほか「中小企業では資金や技術が不足しているという声を聞く。サプライチェーン(供給網)全体で取り組みたい」と説明。アイシンの山本義久執行役員は「電気自動車(EV)用駆動装置の『eアクスル』を最重点としており、投資も計画通り進めている」と訴えた。

不正問題への言及もあった。豊田自動織機の総会では、冒頭に大西朗副会長がフォークリフト用エンジンの認証問題について陳謝。株主からの失望の声を受け「大変重い痛恨の出来事だ。排ガス試験への認識など、会社が社会に自ら向き合う姿勢が甘かった。何としても経験を生かしたい」と誓った。

一部鋼材の寸法が基準より長かったことを公表した愛知製鋼では、株主の質問に対し藤岡高広会長が「製造業の信頼性を著しく損ねた」と陳謝した。5月末に第三者による調査委員会を立ち上げたとし「二度と同じことを起こさないよう、真因の究明と再発防止に全社一丸で取り組む」と語った。

日野自動車ダイハツ工業も含め、グループ内で不正が相次ぐ状況に、豊田合成の総会でも心配の声が寄せられた。安田洋副社長は「当社で不正はない。ただレベルアップが必要な部分もあると認識しており、特に安全や品質には最優先で対応する」と力を込めた。

このほか株主還元について、デンソーの松井靖副社長が「現状2・3%程度の株主資本配当率を3・5%にすることを目指し、利益が減っても安定的に還元したい」と発言。トヨタ紡織の総会では増配の理由について質問が出た。今回、社長交代を実施したのはデンソー、豊田織機、愛知製鋼、豊田合成の4社。株主からは新社長へのエールもあり、デンソーの林新之助社長は「新たな価値を創出し続け、変化の時代を生き抜くのが役割だ」と意気込みを語った。

コロナ禍に伴う来場制限が解除されたこともあり、前年に比べ参加株主数は各社ともに軒並み増えた。

日刊工業新聞 2023年06月22日

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