トヨタが新「ランクル」来年投入、14年ぶり刷新でHV初導入
トヨタ自動車は2日、スポーツ多目的車(SUV)「ランドクルーザー」(ランクル)の新型車「250」を、2024年前半に発売すると発表した。日常使いの要素が強い「ランドクルーザープラド」の実質的な後継モデルで、14年ぶりに刷新する。ガソリンやディーゼルエンジン車に加え、ランクルシリーズで初となるハイブリッド車(HV)を導入。脱炭素化対応も強化しつつ、同シリーズを拡充していく方針だ。(編集委員・政年佐貴恵)
併せて悪路走破性や耐久性が高い「ランクル70」を、日本で再販売することも発表した。海外で販売している現行モデルの改良型として、23年冬の発売を予定する。日本では04年に販売を終了し14年に1年間の期間限定で販売したが、根強い人気を受け、環境対応に合わせてエンジンを改良した上での再販を決めた。トヨタ車体の吉原工場(愛知県豊田市)、富士松工場(同刈谷市)で生産する。
「トヨタにおけるランクルの存在意義、真の価値を見つめ直した」。会見したサイモン・ハンフリーズ執行役員は、こう強調した。250は悪路走破性や信頼性といったイメージを訴求し、従来の「プラド」の名称を廃してランクルの中核モデルとしての位置付けを強めた。森津圭太チーフエンジニアは「『質実剛健』に原点回帰することが、未来につながると考えている」と語る。一方、すでに地位を確立している豪州、中国、東欧、アフリカ、アジア、中南米ではプラドの名前を残す。
車両は旗艦モデル「ランクル300」のプラットフォーム(車台)を採用し、剛性を30%向上。ランクル初の電動パワーステアリングを搭載し、悪路と舗装路での快適な操作性を両立した。HVモデルはまずは北米と中国に投入するが、日本を含めた他の地域にも順次展開する見通し。生産はトヨタの田原工場(同田原市)と、日野自動車の羽村工場(東京都羽村市)で行う。
今回のモデル刷新で「ランクルシリーズ」としての一貫性を強めた背景には、トヨタが近年進める「群戦略」の考え方がある。「クラウン」など代表的な車名ごとに、さまざまなパワートレーン(駆動装置)や車型を展開する戦略だ。取材に応じた中嶋裕樹副社長は「ランクルとして群戦略を広げていくスタート位置に立った」と宣言した。同戦略を強める一つのきっかけが、脱炭素化の潮流だ。
ランクルは過酷な環境での走行を強みとすることから、ディーゼル車やガソリン車が中心だった。しかし中嶋副社長は「『ランクル』という商品を長くご愛顧いただくには、どう脱炭素化や企業平均燃費(CAFE)規制に対応するかが避けて通れない」とし「電動化という手段は必ずある」と話す。今回のHVモデル投入に加え、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)、水素エンジン車など幅広く検討していく。
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