パナソニック・ダイキンのエアコン国内生産、それぞれの生産革新
家庭用エアコンでしのぎを削るパナソニックとダイキン工業。国内ではともに滋賀県草津市に主要生産拠点を置く。猛暑や電気代の高騰、消費エネルギー実質ゼロの住宅(ZEH)の推進などで付加価値のあるエアコンの需要が高まる中、両社とも世界規模で消費地近くでの生産を行う「地域密着・地産地消」を進めている。日本の工場をどのように生かし、生産の工夫を行っているのか。それぞれの事例を追った。(編集委員・安藤光恵)
パナ、自動化に100億円
パナソニックは従来、中国の広州が日本向けエアコンの主要拠点で、草津工場(滋賀県草津市)は一部の生産を担っていた。それを2023―24年度にかけて付加価値の高い高級・中級モデルの国内回帰を進め、草津工場の生産能力を3―4倍に高める。約100億円を投資し、23年度下期に草津工場のラインを強化。自動生産2ラインを新設し、現在手動の1ラインも改造して自動化する。受注から納品までのリードタイムを約4分の1にできるという。
同社の西塚俊治住宅システム機器事業部長は「国内回帰をきっかけに生産革新を進める」と話す。部品加工と組み立ての自動化により生産性向上を進めるとともに、デジタル変革(DX)推進で需要に応じた同期一貫生産を導入する。給湯器の生産ラインで導入した自動化技術をエアコン生産にも生かす。
ダイキン、原価低減推進
一方、ダイキン工業は滋賀製作所(滋賀県草津市)をマザー工場と位置付け、新たな生産技術を開発して海外の工場に展開。現在は原価低減のため、銅からアルミニウムへの置き換えに取り組んでいる。19年から室外機で導入していたアルミ熱交換器を23年からは室内機でも採用した。
ろう付けができる温度範囲が狭いアルミは接合加工が難しいが、作業者による品質の差がないよう自動化を実現。トーチ形状と加熱方法を工夫し、複雑な配管形状に対応した。森田重樹常務執行役員は「規制などの動向を見ながら将来は世界的にアルミへの切り替えを進めたい」とする。
ラインでの作業の漏れがないかの確認にはデジタル技術を活用。従来、部品の取り付け状態の目視確認に頼っていたが、骨格推定技術を用いた動作分析により手の動きや角度を確認。周辺の画像認識と合わせ、正しい作業手順かどうかを自動判定する。作業漏れの疑いを早期発見し、品質の安定と生産ロスの低減につなげる。6月に室外機のラインに導入しており、23年度中には室内機のラインへも展開する計画だ。
ただ生産効率の向上には、設計段階での施策も欠かせない。両社はともに、部品の共通化やモジュール化を設計課題と認識している。家庭用エアコンは広範なニーズに対応するために機種が多種多様で、部品の種類も膨大になりがちだ。異なる機種でも部品を共通化し、さらに共通部品を一体にするモジュール化を進めれば、生産現場の大幅な効率化にもつながる。今後はそうした観点での進化が期待される。
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