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「ドローン宅配」目前に、日本郵便が挑む実用化への今

「ドローン宅配」目前に、日本郵便が挑む実用化への今

荷物を搭載して郵便局を飛び立つドローン

飛行ロボット(ドローン)が住宅地上空を飛んで荷物を遠方まで届けるサービスの実用化が迫ってきた。日本郵便は3月、ドローンを使って荷物を住宅の軒先に配送する試験飛行に成功。ドローンが住宅地など人がいる場所の上空を、操縦士らによる目視なしで飛ぶ「レベル4」飛行は国内初だ。物流の省人化につながることが期待される一方、実用化には安全性や採算性、社会的受容性の確保が課題として残っている。(石川雅基)

試験飛行したのは東京都奥多摩町の集落。郵便局の屋上を飛び立ったドローンは、民家や道路などの上空20―145メートルを飛行し、約2キロメートル離れた住宅の軒先に着陸。900グラムほどの荷物を置いて、再び郵便局に戻った。

荷物を受け取った住民は「土砂崩れなどで通れなくなった際にも役立つ。こちらの荷物も運んでもらえればうれしい」と期待する。

普段はバイクで片道15分ほどかかる配達が、ドローンを使うと5分で済んだ。機体の点検や飛行時の挙動監視を複数人で実施したが「将来は1人で飛ばせるようにする」(日本郵便)。日本郵便は郵便局間の配送を含め、早期実用化を目指す。

最も難易度が高いレベル4は2022年12月に解禁。有人地帯を避ける必要がなく、ほぼ最短ルートで運べる。レベル4飛行には、ドローンの安全性能を国が認める機体認証と、操縦者の知識・技能を証明する操縦ライセンスの取得が必要。その上で事業者には飛行計画の提出などが個別に求められる。

目的地である町内の住宅の軒先に荷物を置き、再び郵便局に戻った

人手不足が深刻化する物流業界では、ドローン配送の実用化に向け各社動き出している。楽天グループは21年、千葉市の超高層マンションへの配送実験を実施。佐川急便は25年度に山間部でドローン配送の実用化を目指す。インプレス総合研究所(東京都千代田区)は物流ドローンの国内市場が急成長すると予想。22年度は24億円にとどまるものの、28年度には約36倍の863億円に拡大するとみる。

普及に向けた課題は安全性と採算性の両立。試験飛行では社外の人材も含め、複数人を配置して安全性を高めた。日本郵便の小池信也常務執行役員は「(当面は経済的な)費用対効果だけでは赤字だが(社会的意義を含め)広く捉えることが必要」と指摘。今後は専門人材を内部で育て、運用コスト低減やノウハウの蓄積を進める方針だ。

社会的受容性の確保も欠かせない。小池常務執行役員は「安全・安心が最低条件。住民や自治体に理解してもらった上で進める」とし、試験飛行では周辺住民に繰り返し説明し理解を求めてきた。利害関係者が多い地域で合意を得て、早期に事業を始めるのは容易ではない。

ドローン振興の民間団体で理事長を務める東京大学の鈴木真二特任教授は、安全性や社会的受容性の確保について「事業者を認証するシステムも必要となる。第三者機関のお墨付きを得た事業者と分かれば、住民の安心感もだいぶ違う」と指摘。運用コスト削減には「1人で同時に複数機を飛ばせることが求められる」と話す。

日刊工業新聞 2023年04月25日

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