人との共存を重要視…VAIOのロボット活用法
人との共存を重要視
VAIO(長野県安曇野市、山野正樹社長)は、安曇野工場(同)でパソコン(PC)の実装や製造、検査を手がける。生産性や品質向上の観点からロボットを本格導入した。工程間で部品を搬送する無人搬送車(AGV)を導入したほか、PCの外観・内観を検査する工程などでロボットを活用。オペレーション本部の神部隆一技術&製造部長は「人との共存が重要」と話す。将来は自律移動ロボット(AMR)の導入を計画する。(阿部未沙子)
VAIOは2014―15年ごろに接着剤塗布や接着体のプレス工程にロボットを導入。AGVや検査工程でのロボットは19年以降に活用を始めた。生産規模拡大のために人が必要だったが、人の判断にはバラつきがある。「バラつき抑制のためにも、ロボットの力を借りた」(神部氏)。
ただ、ロボット導入には課題もあった。神部氏は「現場に(ロボットを)落とし込もうとしても、合わないことがあった」と振り返る。加工対象物(ワーク)との兼ね合いなど技術面での課題があった。ただ「ロボットを段階的に導入することで、解決していった」(同)。
導入した当初はロボット運用に対し、現場で働く人々からは少なからず抵抗があったようだ。だが、導入したことで効果が実感できたといい「モノづくりを改善しようという、変革に対するマインドが醸成できた」(同)と変化に手応えを感じる。
同社では複数の工程でロボットを活用する。搬送ではAGVが活躍している。工程間の搬送のほか、倉庫から生産エリアに部品を供給するために使う。AGVは建物を行き来する必要があり、自らドアの開閉ができるのが特徴だ。
内観を検査する工程では、アンテナの向きなど複数の項目に関して、内部の組み立て状態を確認するのにロボットを用いる。検査項目数によって異なるが、20―30秒程度で検査が完了するという。
内観検査後には、多関節ロボットが自動でキーボードやクリックパッド、発光ダイオード(LED)の点灯状況を検査。基本性能を確認する。外観検査では外光を遮断した状態でPC全体を撮影し、ロゴの色のほかキーボードの印字などを確認する。
ほかにも、生産管理システムにカメラを用いる。撮影したデータを収集することで、不良品が出た場面を特定できるため、生産ラインの品質向上につながる。「不具合発生時の解析速度は従来の倍以上短縮した上、精度も上がった」(同)という。
ただPCを使う顧客は人であることを勘案し、人とロボットの共存を重視する。キーボードを押す感触の確認や異音の有無などを見つけるために、専任検査員として人が検査をする。「人が感じる違和感をいかに見逃さないか」(同)が重要だという。
人とロボットが、それぞれの得意分野を補完し合いながらPCを製造するVAIO。将来、検査や搬送領域でのロボット活用を一段と進める計画で、AMRも近いうちに導入する方針だ。