ニュースイッチ

日野自動車・三菱ふそうの統合に期待と不安、サプライヤーの本音

日野自動車・三菱ふそうの統合に期待と不安、サプライヤーの本音

三菱ふそうの川崎工場トラック組み立てライン

日野自動車三菱ふそうトラック・バスによる経営統合の発表に、サプライヤーの受け止め方は期待と不安が入り交じっている。電動化対応や原材料高騰など当面の多くの課題対応に追われる中、今回の大型再編の影響について、サプライヤー関係者からは「商機が広がるかもしれない」など期待する声が上がる一方、「部品の共通化が進み、外資系サプライヤーに仕事が流れ、日本のサプライヤーが手がけるものが減るのではないか」と不安視する向きもある。

2024年末をめどとする日野自、三菱ふそうの経営統合計画。トヨタ自動車、独ダイムラートラックを含めた4社は、規模のメリットを生かしCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)など新技術の開発を加速させる。

「(経営統合の)時期は決まったが、どんなシナジー(相乗効果)のために何を持ち寄るのかは詳しく聞けていない」(李太煥NITTAN社長)など、具体的な相乗効果が見えにくいことや統合比率など今後協議する点も多く、現時点でサプライヤー各社は交渉の行方を注視するしかない。

サプライヤー関係者からは「規模を背景とした調達力が強まることが予想され、特に三菱ふそうが主導権を握ると実質ダイムラーとの交渉となる。同社との交渉は、特に日系サプライヤーにとっては少し厳しさが増すのでは」との見方がある。また「同じ部品が(日野自と三菱ふそうの)2社に出ていて単価が違うと調整に苦労することもある」という。

一方で「4社がしっかり使えるパワーユニットを開発するなら、サプライヤーは4社への対応が1社で済み、有利になる」(李NITTAN社長)といった声や、「取引がなかった海外の商圏に出て行ける機会が生まれるかもしれない」(サプライヤー担当者)と前向きに捉える意見もある。商機を取り込むには、顧客ニーズを迅速にくみ取り、一段と技術開発の速度を上げる必要がありそうだ。

ある部品メーカーの担当者は「日野自はエンジン不正の問題もあり、新規案件の立ち上がりが後ろ倒しになるなど不安があった。経営統合を機に日野自の経営が立ち直ることを期待したい」とする。

他方、「商用車のパワートレーン(駆動装置)を統合するという話になったとしても、認証を含めすぐ切り替えたり統合することは難しいだろう。取引先とのビジネスは、統合後も大きな変化はない」(エンジン部品メーカー社長)と冷静な意見も出ている。

日刊工業新聞 2023年06月02日

編集部のおすすめ