ニュースイッチ

運送業「24年問題」…トラックメーカーが提案する解決法

運送業「24年問題」…トラックメーカーが提案する解決法

NLJが導入した世界最大級のダブル連結トラック

デジタル技術で供給網維持

運送業のトラック運転手に対して、年間残業時間の上限960時間の規制が適用される改正労働基準法の施行が2024年4月に迫っている。トラックメーカー各社は顧客の課題解決に向けデジタル技術を駆使したサービス開発、提案に注力する。一方の運送業は、迫る規制を意識しつつも、運賃引き上げなどの対応にとどまる企業が多く、根本的な解決にならないのが実態だ。日本の健全なサプライチェーン(供給網)維持のため対応は急務だ。(大原佑美子)

NLJ W連結車の混載支援

日野自動車子会社のネクスト・ロジスティクス・ジャパン(NLJ、東京都新宿区)は、メーカー、運送、金融など20社と協力し、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)技術で物流にまつわる課題解決を目指す。NLJの梅村幸生社長は「24年問題は、法改正の対象こそ物流事業者だが、影響を受けるのは荷主である製造業。運賃引き上げは国際競争力の低下をもたらす」と警鐘を鳴らす。

同社はダブル連結トラックで、異業種・異業態の荷物を混載。屋根にセンサーを付けて積載率を最大化し、統計値で39%だった複合積載率を3カ月平均で63%、最大で89%に高めた。

異業種の荷物は荷姿やパレットの大きさ、出荷タイミング、発着地などが異なり組み合わせが難しい。同社は量子コンピューティング技術を用いて配車と積み付けの組み合わせを高速で自動計算するシステム「ネロス」の運用を開始。人手で2時間以上かかる業務を40秒程度に短縮できる。将来はオープンプラットフォームとして外販も見据える。

従来は3・8メートルだった車両全高を4・1メートルにし、荷室容積が大型トラック2・5台分に匹敵する世界最大級のダブル連結トラックを導入。また関東―関西といった長距離輸送では、トラックと運転手を2社の物流企業間でシェアし、中部地方の中継地点で運転手を交代して配送する仕組みを整えた。運転手の働き方改善につながる。「皆で物流を効率の良い形にし、日々進化させる」(梅村社長)構えだ。

三菱ふそう AI活用で配送最適化

三菱ふそうが販売する「ワイズ・システムズ」は、AIを活用し配送計画作成にかかる時間を大幅に短縮する(利用イメージ)

三菱ふそうトラック・バスは人工知能(AI)を活用してラストワンマイル(目的地までの最終区間)配送を最適化する配送計画システム「ワイズ・システムズ」を21年夏に発売した。物流企業数社が導入済みで「導入前まで3―4時間かかっていた翌日の配送計画作成を30分に短縮できた」「操作画面が見やすく業務のデジタル変革(DX)に前向きに取り組める」など利用者から好評だ。

管理用のパソコンと運転手のスマートフォンを使うクラウドベースのサービスで、車両のブランドを問わない。三菱ふそうの山本和明ワイズ・システムズ担当マネージャーは「24年問題に対応する運送業の負担軽減に何かできないかと、米国企業が開発した同サービスの国内販売を決めた」と経緯を説明。個社でなく多面的に取り組むことの大切さを指摘する。展示会でブース来訪者数が前回より増えるなど物流企業の関心も高まってきているようだ。

日本自動車工業会(自工会)が22年度に実施した「普通トラック市場動向調査」で、トラックユーザーは「24年問題の取り組みが進みつつも、高速活用増、運賃・給与引き上げといった眼前の課題対応が中心」といった実情が浮き彫りとなった。ある運送会社の幹部は「時間外割増賃金の計算もできていない会社がたくさんある」と漏らす。課題解決に貢献するサービスと運送業との間をどうマッチングできるかが問われている。

日刊工業新聞 2023年05月11日

編集部のおすすめ