三菱重工・川崎重工・IHI…「稼ぎ頭」勢い続く重工大手に不安要素はある?
重工業大手3社の業績を稼ぎ頭の事業がけん引する状況は2024年3月期も続く。三菱重工業が連結業績予想(国際会計基準)の事業利益の50%を発電機器などのエナジー部門で稼ぐと見込むように好調な事業が全体を支える。好調が持続するかという懸念や事業の一部に不安要素があるものの、従来の構図に大きな変化はなさそうだ。
三菱重工業はエナジー部門の事業利益を前期比76・3%増の1500億円と見込む。同部門が引っ張り、全体でも事業増益を見込む。事業利益の同部門の比率は6ポイント上昇する。
23年3月期に石炭火力発電で発生した一時費用が減る効果や、天然ガス火力や航空機エンジンの好調が続く。泉沢清次社長は「ガスタービンは底堅いニーズがあり、航空機エンジンはようやくコロナ前を上回った」と23年3月期の手応えを示した。原子力を含め、24年3月期もこれらの好調が続くとみる。
川崎重工業は2輪・4輪車のパワースポーツ&エンジン(PS&E)部門が大黒柱だ。北米、東南アジア向け2輪車と北米向け4輪車が好調で、23年3月期は事業利益の約84%を同部門が占めた。24年3月期は同部門の事業利益が同34・3%減の470億円となり、全体でも事業減益を見込むが、同部門の比率は60%と依然高い。
24年3月期は値引きなど販売促進費を多めに見積もったことが減益要因になる。ただ販促費を想定より使わなければ、事業利益が上振れる可能性がある。
IHIは主力の民間航空機エンジンを擁す航空・宇宙・防衛部門が23年3月期(同)の営業利益全体の約42%を占めた。24年3月期連結業績予想は同部門が同16・7%増の510億円と営業利益の約45%を稼ぎ、全体でも営業増益を見込む。
経済再開で航空機の運航が回復し、スペアパーツ販売が伸びている。懸念材料が地域路線用のリージョナルジェットのパイロット不足だ。不足により運航が伸びず、スペアパーツ販売に響いている。福本保明執行役員財務部長は「今期は(リージョナルジェット向けエンジンの)CF34の取扱高は慎重に織り込んでいる」とした。