「電子部品」成長持続のカギ握る、“スマホの次”は何か
トランジスタラジオ、アマチュア無線、テレビ、パソコン、そしてスマートフォン―。戦後の電子部品産業がおおむね右肩上がりで発展できたのは、技術革新で次々に生まれる最終製品の需要を巧みに捉えてきたためだ。では“スマホの次”に伸びる最終製品は何か。コロナ禍以前からこの問いに対する明確な答えが見えない中、2022年の電子部品業界は中華系スマホ需要の減少に直面した。売上高の約4割をスマホなど通信向けが占める村田製作所は、増益としていた23年3月期の連結当期純利益予想を減益に修正した。
各社は23年にスマホ需要回復を見込むが、普及率上昇や機能の成熟化でかつての伸びは見込みにくい。村田によると通信向けが再び力強く需要をけん引するのはウエアラブル機器など、スマホ以外のデジタル機器で第5世代通信(5G)の採用が進む20年代後半。それまでは「技術革新が一番大きく進むのはモビリティー」と中島規巨社長は指摘する。
村田は車載向け積層セラミックコンデンサー(MLCC)について25年度まで年率8%の成長を見込む。中国で約450億円を投じMLCCの部材を増産するのも、自動車向けへの対応が一因だ。電動化で車内の電圧が上昇し、熱対応が必要になってくるとして「高温対応に優れたフィルムコンデンサーも期待している」(中島社長)。TDKも約500億円をかけ、電気自動車(EV)に使う電子部品の新工場を岩手県に設ける計画だ。
ただ基本的にスマホメーカーへ部品を納入していた従来と異なり、自動車向け電子部品の多くの納入先はティア1(1次下請け会社)。完成車メーカーの本音を探れるとは限らず、次の技術革新を捉えにくい構造だ。独ボッシュや独コンチネンタルなど、複数の大手顧客への対応も求められる。重い供給責任やスマホ向けに比べ低い営業利益率の中でいかに成長を継続し、次の飛躍につなげられるか、電子部品各社の経営手腕が問われる。
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