年間418時間作業短縮…ロボットと働く熱交換器製造企業の成果
サンライズ工業(埼玉県越谷市、中山晃宏社長)は業務用熱交換器を製造する。2020年に初めてカメラ付き協働ロボットを導入。円盤状のフィンと呼ばれるアルミニウム部品の積層作業を無人化した。22年からは同じ型のロボットを追加導入して、銅管の穴開け作業の自動化に取り組んでいる。中山社長は「多品種小ロットのモノづくりでも、ロボットの活用で単純作業から解放され、人が創造的な作業に専念できる」と話す。(さいたま・天野博光)
台湾を拠点とするテックマン・ロボットのTM5―900を最初に購入したのが、20年4月。パーツフィーダー(供給装置)など周辺機器の導入には、埼玉県産業振興公社の「埼玉県中小企業ものづくりAI・IoTロボットシステム導入トライアル補助金」を活用した。
フィーダーから供給されるフィンをロボットの吸着ユニットで運び、軸に重ねて積層する工程を自動化した。ロボット導入で、人手による場合の労務費年間55万円が削減できたほか、同418時間の作業時間の短縮につながった。
「受注拡大により導入したロボットがフィン積層の専用装置になってしまった。工場内にはもっとロボットに置き換えができる作業がある」(生産管理部熱交課の小椋大樹課長)として、越谷市の「ビジネスパワーアップ補助金」を使って2台目を導入した。現在は銅管の穴開け作業の自動化を担っている。
穴開け作業の工程は①ロボットが銅管をつかむ②穴開け装置まで運ぶ③銅管を装置に押し込む④操作盤のスイッチを押す⑤加工が終わると再びスイッチを押してストップする⑥銅管を取り出す⑦箱に入れる―で構成する。
カメラでターゲットマークを認識して位置を判断するため、ロボットや穴開け装置、操作盤、ワークの位置がしっかり固定されていなくても、ロボットが正確に作業する。
「あえてロボットと穴開け装置の入出力をつながず、ロボットに操作盤のスイッチを押させることで、他の作業にロボットを転用しやすいなど汎用性が広がる」と松下幸造取締役工場長は強調する。
産業用ロボットは周囲を柵で囲って人の作業と分離する必要がある。ロボットは固定設置で、安全柵のスペースも含め工場内に広い空間が不可欠になる。
一方、協働ロボットは人と作業空間を共有可能。移設も簡単なため「購入したものの、使い勝手が悪くて工場の隅でホコリを被ってしまう心配もない」(松下取締役)と協働ロボットを導入した理由を説明する。
フィンの積層と銅管の穴開けを担う2台のロボットとも、入社6年目の山脇一馬さんがプログラムや操作を担当する。「楽しんで作業をしている」(中山社長)、「覚えが早い」(松下取締役)、「責任感がある」(小椋課長)と仕事ぶりにそろって太鼓判を押す。
中山社長は「ロウ付け作業のロボット化にも取り組みたい。熱に関連して当社が貢献できる分野は、もっと幅広くある」と将来ビジョンを描く。