「給与水準2割引き上げたい」中小アルミニウム鋳造企業のロボット活用法
人とロボ、作業すみ分け
内外(群馬県高崎市、小沢淳社長)は、社内のさまざまな業務にロボットを導入し、生産性向上と業務の質向上に役立てている。主力のアルミニウム鋳造をはじめ、検査工程など従来は人間が対応してきた業務をロボットが代行する。危険で単純な作業をロボットに置き換えることで、ミスや不具合の低減につなげている。(群馬・松崎裕)
内外が、ロボット導入で特に力を入れるのが、アルミニウム鋳造による自動車部品の製造ライン。溶解したアルミニウムの溶湯を産業ロボットで運び金型に流し込む。一連の作業は人が行ってきたが、今は仕上げや最後の調整、確認以外は自動化している。小沢社長は「人がやっていた作業をロボットやIoT(モノのインターネット)を活用して置き換えている」という。
アルミニウム鋳造部品の品質を大きく左右するのは金型。その後の切削や研削などの作業が品質に与える影響は小さい。むしろ人が作業することによりミスが発生し、けがをする場合もある。これら比較的単調といえる作業をロボットに移行してきた。重量物の搬送、高温で危険な作業も徐々に自動化していった。中には95%近く自動化したラインもある。
ロボットによる作業で全てが完結するわけではない。溶解したアルミニウムの溶湯をロボットで搬送するのは大型鋳造が中心。細やかな作業が求められる小型鋳造は人が行っている。ロボットの進化により制御範囲が広がれば、より細やかな鋳造を任せられるようになるが、まずは人とロボットで得意領域をすみ分ける。
さらに検査工程で協働ロボットの活用を進める。知人の企業と連携し、海外製の協働ロボットを部品の検査工程に導入した。カメラを備えたロボットが、人が行ってきた一連の動作を黙々とこなす。キーボードや作動ボタンをロボットが人間と同じように打ち込み、製品をつかんで所定の場所に置く。別の検査工程では精密測定機器を使い、1日40件もの部品の検査を人間が夜勤体制でこなしてきた。同様の協業ロボットで自動化することで夜勤業務を削減できた。
工場内の自動化が進むが、人は人にしかできない製品の付加価値を高める業務に移行している。製造工程で取得したデータを人間が解析し、アルミニウム鋳造の加工に反映し品質を改善する。
内外では2023年までに人工知能(AI)を活用したアルミニウム鋳造の自動化ラインを構築する。AIで解析した検査データと製造データを連携して生産性と品質をさらに向上させる計画。AIによるアルミニウム鋳造の製造ラインを実現し、より高い品質が求められる次世代自動車向け部品の新規受注を増やすなど収益性を高める狙いだ。
小沢社長は「人が担う仕事の付加価値を高め、新規受注を獲得し、給与水準を2割引き上げたい」と意気込む。ロボットによる自動化を推し進め、中小アルミニウム鋳造の新たな生き残り策を打ち出す。