NTTが開発、光で動くハイドロゲルがスゴい
NTTバイオメディカル情報科学研究センタの高橋陸研究員と山口真澄グループリーダらは29日、光刺激で蠕動(ぜんどう)運動するハイドロゲルを開発したと発表した。管を収縮させて内容物を押し出すことに成功した。小腸などの生体器官の運動を再現できる。管内で細胞を培養すれば、消化器の生体組織を模擬できる。チップ型の人工臓器や創薬研究などにつなげていく。
温度変化でゲル内の水分量が変化するポリイソプロピルアクリルアミドゲルで流路を形成した。ゲルに金ナノロッド(ナノは10億分の1)を分散させ、近赤外光を金ナノロッドに吸収させて熱に変換する。するとゲルから水分が排出されて流路が収縮する。
高さ約0・5ミリメートルの流路が光を当てると約0・1ミリメートルに収縮する。0・1―1ヘルツの速さで膨潤収縮を繰り返し、光を当てた部分のみが収縮する。
消化管が内容物を混ぜる分節運動や、内容物を押し出す蠕動運動を再現できた。排出速度は秒速0・3ミリ―2ミリメートル。ラットの小腸は秒速2ミリ―5ミリメートルのため、臓器の運動を再現できたといえる。ワイヤなどで機械的に臓器の運動を再現すると仕組みが複雑になる。新技術は光を当てるだけで駆動でき、流路を集積化できる。大学と連携して発がん機構の研究などに活用していく。
日刊工業新聞 2023年3月30日