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eスポーツ×地域活性化。NTT子会社に期待が高まる理由

相談件数増、専門人材育成急ぐ
eスポーツ×地域活性化。NTT子会社に期待が高まる理由

ゲーム対戦競技のeスポーツは地域活性化の手段としても注目されている(©セガ)

eスポーツの関連事業を手がけるNTTeスポーツ(東京都新宿区、原田元晴社長)への期待が高まっている。eスポーツを体験できる同社の施設「エグゼフィールド アキバ」(東京都千代田区)の内覧件数が、2020年8月の開設以来、約300件に到達。特にeスポーツで地域を活性化したい自治体のニーズが大きい。同社は25年度に売上高を21年度比約5倍の20億円弱に引き上げる計画で、達成に向けてマーケティング力を強化できるかが問われる。(張谷京子)

NTTeスポーツはNTT東日本の子会社で、20年1月に設立された。ゲーム対戦競技であるeスポーツの施設構築・運用やイベント開催などを手がけており、これまで神奈川県横須賀市や東京都立川市、山形県長井市など10以上の自治体にサービスを提供してきた。横須賀市では、市内の高校でeスポーツ部の開設も支援した。

今後同社が取り組むのが、マーケティング力の強化。「想定以上に相談がどんどん入ってきている」(原田社長)状況ではあるが、eスポーツに関心を持つ自治体・地域企業のニーズは、若者の流出阻止や地域コミュニティーの活性化、観光客の誘致など、さまざまだ。eスポーツの観戦はオンライン主体になるとみられるものの、大会施設を設けて集客につなげる方法は考えられる。それぞれの顧客のニーズに合ったサービスを提供していく必要がある。

4月には広告宣伝を手がけるNTTアドの取締役などを務めた経験を持つ原田社長が、NTT東日本の井上福造社長からの期待を受けて登板した。原田社長は「マーケティング力を磨いていかなくては」と語気を強める。

特に課題となりそうなのが人材の問題。相談件数の増加に応じて人員増強が必要となる一方、「人(社員)の数が多ければいいというわけではない。何を実現したら(顧客に)喜んでもらえるか、会話しながらでないとわからない」(同)。NTTeスポーツはNTT東日本と連携しながら、マーケティング能力を持つ人材の育成を目指す。

顧客からの相談案件への対応を第一優先としつつも、今後NTTeスポーツは他企業との連携にも力を注ぐ予定。同社にはNTTグループのほか、スカパーJSAT、娯楽施設を手がけるタイトー(東京都新宿区)などが出資している。ただ、現状はまだ「各社の強みを最大限活用できていない」(同)。映像配信や施設運営など各社のノウハウを結集し、新たなサービスを提供していく考えだ。

日本能率協会総合研究所(東京都港区)の推計によると、国内のeスポーツ市場は26年度に20年度比8・3倍の500億円に拡大する。原田NTTeスポーツ社長は日本市場について「伸びしろは大きい。ゲーム自体では大国だが、eスポーツという競技ではまだ他の国と比べて市場規模は小さい」と期待を寄せる。今後、自社がけん引役となれるか試される。

日刊工業新聞 2022年6月9日

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