日本企業の製造・開発さらに活発化へ、タイ投資委が外資への投資優遇拡大
タイ投資委員会(BOI)は1月から外資企業への投資優遇制度の恩典を拡大した。タイ政府が掲げるバイオ・循環型・グリーン経済(BCG)の実現に向け、関連企業の投資を呼び込み、タイの技術力と産業の成長につなげる狙いだ。タイに拠点を持つ日本企業も多く、BOIの投資優遇措置は大きな魅力となっている。優遇制度の拡大で日本企業による製造や開発がさらに活発化しそうだ。
日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域において日系企業・拠点数の最多はタイとなっている。関連産業が集積し原料調達が容易なことや、顧客企業が集まっていることが要因だ。
これまでBOIの投資優遇制度は事業内容などにより5段階に分かれており、法人税の免除期間が異なっていた。新制度では、これまで最も高かったA1グループの上にA1プラスを設け、対象領域への投資額の上限なしでの免税期間が8年から最大13年に延長された。バイオテクノロジーやナノテクノロジー、先端素材などの開発、製造事業がターゲットの中心となる。BOIのソンクリン・プロイミー副長官は「BCGには幅広いコンセプトの事業が含まれ、タイにとって優先度が高いだけでなくグローバルな政策とも合致する」と説明する。
キリンホールディングス子会社の協和発酵バイオ(東京都中野区)も、タイでBOIの恩典を受ける日本企業の一つだ。タイ現地法人のタイ協和バイオテクノロジーズ(ラヨーン県)はアミノ酸やオリゴ糖の製造をしており、三つの製造ラインでA1の認証を取得している。鈴木雅治エグゼクティブディレクターはタイでの事業について「法人税の免除に加えて、機械や設備の輸入税の免除も恩恵が大きい。制度に加えて製造で必要な糖源のキャッサバが現地調達できるといった点もタイに拠点を置くメリットだ」と説明する。
タイ協和バイオテクノロジーズは2022年に、母乳に含まれるオリゴ糖「HMO」の生産設備を完成させた。母乳の成分に近いHMO入り粉ミルクは欧米や人口増加を見込む中国、アジアでさらなる消費拡大が期待されており、鈴木エグゼクティブディレクターは「23年以降の工場拡張を検討している。他の施設と同等のA1をまずは目指し、必要に応じてA1プラスも狙っていく」とし、投資に前向きな姿勢を示す。
タイは国のビジョンに合致したビジネスを展開する外資企業に手厚い優遇制度を整備することで、投資を呼び込むことに成功してきた。A1プラスの新設について、プロイミー副長官は「投資の継続と拡大、さらに技術移転につながることを期待している」と話す。長期的な産業ビジョンの実現に向けた優遇制度の魅力を発信することが、外資企業のタイ進出を後押ししそうだ。