キャッシュフロー経営を重視する日立建機の「最重要目標」
マージン、安定的に15%超確保へ
日立建機は資金効率性を重視した、キャッシュフロー経営に力を注ぐ。2022年3月期はグループ売上収益1兆円を達成、23年3月期も北米やオセアニア、アジア、欧州市場の伸びもあり、売上収益は1兆1600億円とさらに拡大、調整後営業利益率もほぼ2ケタまで上がる見通しだ。一方でこれまでにおける経験則と同様、売り上げ拡大局面においては売掛債権や棚卸し資産を主体に運転資本が膨らみ、キャッシュフローに影響が発生。22年度上期はフリーキャッシュフローがサプライチェーン混乱による仕掛在庫、港滞留在庫がかさんで、支出超過になった。23年度から始まる新中期経営計画では、運転資本のコントロールを確実に実行し「営業キャッシュフローマージン率を安定的に15%以上確保することを最重要目標としたい」(塩嶋慶一郎執行役常務兼取締役CFO財務本部長)考えだ。
最重要開拓市場に据える北米では、30数年来、続けてきた米ディアとの合弁関係を22年2月末に解消。北中南米全域で独自展開のスタートを切った。競争力の高い新商品投入で売り上げ大幅伸長を計画するが、メーカー独自の販売ファイナンスの提供が不可欠。これについては伊藤忠商事や東京センチュリーと共同で、販売金融の新会社を近く設立する予定。拡販に伴う財務インパクトが大きくならないよう、新会社を通じてリースファイナンス業務を拡大する方針だ。
社内での業績管理手法ではビジネスユニット制を導入、おのおのの事業ごとの目標達成責任を明確にする。売掛債権や在庫管理、固定資産の効率性も事業ごとに目標管理していく。
北中南米で独自展開を始め、国内で展開してきた営業支援ツールや稼働状況把握の「コンサイト」を海外でも加速する予定で、デジタル変革(DX)関連の研究投資も大幅増額が必要だ。これについては連結売上高の1%をあてる考え。電動ショベルなどの研究投資も3%を見込み、開発投資が膨らむ環境下では運転資本コントロールによる安定した営業キャッシュフロー確保が最重要になる。「キャッシュフローがあってこそ投資も、株主還元も、財務改善も可能になる」。塩嶋執行役常務は言い切る。
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