“インバー合金”世界に照準、新報国マテが半導体装置へ売り込む
新報国マテリアルは主力の低熱膨張合金(インバー合金)の事業展開を加速する。2023年内にも海外半導体製造装置メーカーに試作品の供給を開始し、世界展開の本格化に乗り出す。インバー合金の金属積層造形(AM)の製品化に向け社長直轄の組織も設置する予定で、「今年は成長路線に踏み出す転換点」(成瀬正社長)として“守り”から“攻め”へのシフトを明確にする。
これまで航空・宇宙、光工学業界など主要な国際学会に技術者を派遣し、論文発表を通じた技術発信や人的交流など種まきを進めてきた。月末に米国で開かれる学会では海外半導体製造装置メーカーの幹部と技術交流する予定。成瀬社長は「ようやく接触する機会を得た。年内にサンプル出荷まで実現させたい」と意気込む。従来、国内向けが中心だったが世界展開の端緒として海外との取引拡大につなげる。
AMでは各部門にまたがるワーキンググループを発展的に解消し、社長直轄の「3D推進部」を3月に設立する。優れたAM技術を持つ東金属産業(静岡県沼津市)との協業や、兵庫県立大学特任教授の柳谷彰彦氏を顧問に招くなど体制を整備してきたが、3D推進部を「事業展開のエンジン」(成瀬社長)として意思決定を迅速化させる。複雑形状・軽量化をターゲットにインバー合金のAMの製品化にめどを付け、事業計画策定や設備投資計画などを指揮して、鍛造、鋳造などと並ぶ新たな柱に育てる方針だ。
新報国マテリアルは08年のリーマン・ショックを受け、業績が低迷。09年に成瀬氏が社長に就任し、工場集約や人員削減など構造改革を進め、業績回復や財務基盤強固を図ってきた。成瀬社長は「これまでは会社を守るための改革だった。うまくいったのは歴代社長が残した(インバー合金など)“遺産”のおかげ。今いる我々で次の世代への遺産を作る」と力説する。次の成長に向けた有能な人材の採用や登用、育成も積極的に進める構えで、新事業の進展が世代交代の道筋にもなる。
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