清掃会社がロボット法人貸し出し、背景にあった危機感
2018年はリ・プロダクツ(大津市、高奥要輔社長)にとって“ロボット元年”となった。ショッピングセンターなどの清掃業務を請け負う同社は、清掃スタッフの確保が難しくなったことから掃除ロボットを導入。同時に、掃除ロボットのニーズ拡大を見据えて法人向けレンタルサービス事業も始めた。人手不足の拡大を背景に事業は着実に成長。今や掃除ロボットは、同社にとってなくてはならない存在だ。(京都・新庄悠)
リ・プロダクツでは関西や北陸、首都圏で約700人の清掃スタッフが、ショッピングセンターやオフィスビルの清掃を行っている。従来使用していた、人が運転する床洗浄機をソフトバンクロボティクス(東京都港区)の自動床洗浄ロボット「RS26」に置き換えた。最初に清掃エリアを手動運転して地図を作成、清掃ルートを記憶させ、次回以降はスタートボタンを押すだけで清掃ルートを自律走行する。
今では10台が現場で活躍している。導入当初は、安全性やセキュリティーの観点から顧客の理解を得るのも一苦労だったという。
高奥社長は「ロボットは高かったが、今から使い方を把握しておかないと性能が良くなってからでは使いこなせない」と、導入を決めたもう一つの理由を振り返る。使える現場・使えない現場の見極めなどを含めて、実際に使いこなすまで1年以上かかったが、この時の経験をレンタルサービス事業に応用している。
法人向けレンタルサービス事業は現在、工場などの大規模施設向けに2機種、オフィスや飲食店などの中小規模向けに4機種の床用掃除ロボットを展開。ロボットの選定や最適な使い方など、自社の現場で使用しているノウハウを基にサポートする。人手不足を背景に掃除ロボットの認知度も上がり、同事業における22年の新規顧客は21年比で3倍以上に伸長した。
同事業の立ち上げに踏み切った背景には、掃除ロボットの需要増だけではなく「いずれ人が清掃する需要が減っていくかもしれない」(高奥社長)という危機感もあった。レンタルサービスはその試金石でもあるという。
レンタルサービスのノウハウを蓄積するため、自社でも掃除ロボットを導入。掃除ロボットが清掃しやすいようにオフィスのレイアウトや家具を変更し、各メーカーの新製品が出ると入れ替えて、使い方や耐久性などを検証している。
本社では1―5階の各フロアに1台ずつ導入し、1日1―2回清掃を行う。これまでは当番制で、各階を約2時間かけて掃除機がけなどしていたが、導入後は人手の清掃は階段だけとなり、15分程度で済むようになった。工場などの大規模向け掃除ロボットの検証として、モップの製造やレンタルマットの洗濯などを担うサービスセンター(大津市)にも導入している。
今後は清掃を軸にした「快適空間の提供」へとフィールドを広げ、レンタル商品のラインアップを増やしていく。