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お掃除ロボットが解決する京都駅前地下街ならではの課題

お掃除ロボットが解決する京都駅前地下街ならではの課題

自動清掃ロボットが夜間に広大なフロアを3時間かけてまわる

国内有数の観光名所を有する京都。その玄関口となる京都駅前地下街「Porta(ポルタ)」で1月から働き始めたのが、カナダ・Avidbots製の自動清掃ロボット「Neo(ネオ)2」だ。導入した京都ステーションセンター(京都市下京区)の田村孝之取締役は「一生懸命な姿がけなげで可愛らしい」と高く評価する。導入の背景には混雑する通路を清掃する難しさや人材不足など、京都駅前地下街ならではの課題があった。(大阪・大川藍)

午前1時。警備担当者がボタンを押すと、Neo2が静かに動きだした。1万2700平方メートルある広大なフロア面積の半分を3時間かけてまわり、清掃を終えて持ち場へ帰る。「これまで2人がかりで3―4日かけて行っていた作業が1台・2日で終わる」(田村取締役)といい、業務効率化に大きく貢献している。

京都駅前地下街は観光客だけでなく通勤客が乗り換えなどに利用し「コロナ禍前は1日10万―12万人が歩く中で清掃する必要があった」(同)。コロナ禍でも人混みでの作業は従業員の負担が大きかったという。「夜間に作業しようとすると、今度は人手が集まらない」(同)といい、解決策として見いだしたのがロボットだった。

Neo2は最高速4・86キロメートルと人の早歩き程度の速度で稼働し、「(頑固な)飲食店の油汚れもきれいに落とす」(同)基本性能の高さが強み。また移動順路を定めるマッピングを一度すれば細かな修正が遠隔からできるほか、障害物の検知・回避能力が高く清掃途中に停止することもない。頻繁にレイアウト変更がある地下街特有の事情に対応できる点が評価を得た。

京都駅前地下街「ポルタ」で1月にNeo2の運用が始まった

また「点字ブロックを乗り越えられるかも焦点の一つ」だったが、実証実験を経て課題をクリア。懸念していた耐荷重についても、天然石のタイルへ影響を与えることなく稼働できているという。

ロボ導入は2019年から検討し、複数の事業者を比較したものの、費用対効果やメンテナンスの面でなかなか導入に至らなかった。Neo2が国内の百貨店などで採用されはじめたことで、「事例が決め手となって」(同)導入の話が進んだという。故障の少なさや扱いやすさも重要な判断基準となった。

京都はインバウンド(訪日外国人)観光客の増加でホテルの清掃需要も強まっている。新型コロナウイルス感染症の収束により「ホテルの利用が復活してくると(人材のやりくりが)間に合わない」と観光関連事業者は危機感を強める。清掃技能の習得には時間がかかる場合が多く、人材育成の期間も課題となるからだ。従業員や取引先の負担を減らす解決策の一つとして、ロボットの導入は重要な選択肢となる。

今後、京都ステーションセンターは案内所への人工知能(AI)コンシェルジュの導入を検討する。多様な観光情報や多言語での案内など、高度な能力が要求される業務においてもロボットを補完的に活用し、サービスを高度化する方針だ。

日刊工業新聞 2022年2月15日

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