賃貸にワークスペース、マンション大手が追及する新たな住まいの形
コロナ禍で多様化した働き方を踏まえ、賃貸マンションでも共用部にワークスペースを設置する動きが出てきた。住まいにおけるワークスペースは、個別に間取りや設備を決める注文住宅で先行。それがテレワークの広がりを受け分譲マンションに拡大し、賃貸マンションにも広がった格好だ。オフィス勤務と組み合わせた「ハイブリッドワーク」も定着する中、マンション大手は新たな住まいの形を追求している。
「住まいと働く、それにくつろぐの機能を融合した」。三井不動産レジデンシャルは今夏、東京都江東区に完全個室12室やカフェのようなオープンスペースなど約200平方メートルの共用部を設けた「パークアクシス門前仲町テラス」を竣工した。フィットネス機器や無人コンビニエンスストア、さらに屋上には約55平方メートルのテラスと、用途や気分に応じて利用できる機能や空間を整備した。
同マンションは7階建てで、広さ25―40・75平方メートルまで1R―2DKの189戸が入る。東京メトロ東西線の門前仲町駅から徒歩10分とやや距離はあるものの、20―30代の単身者を中心に人気だという。管理費・共益費込みの賃料は13万円前後―21万円前後。「都心にアクセスしやすいことも評価されている」(三井不動産レジデンシャル)と好感触を示す。
同社は第2弾として同じく共用部に個室や半個室のワークスペースを設けた「パークアクシス東陽町レジデンス」(東京都江東区)を完成。広さ25―50平方メートルの1R―2LDKで入居者を募集中だ。
今後の開発物件でも「好立地の大規模案件で十分な広さの共用部を確保できれば、同様にワークスペースを企画していく」方針を掲げる。
一方、三菱地所レジデンスが職住一体を掲げて仕上げたのが「ザ・パークハビオSOHO大手町」(東京都千代田区)だ。「通勤時間ゼロという新たなライフスタイルを提供する」(三菱地所レジデンス)とし、24時間使えるワークスペースを設置した。東京都渋谷区と目黒区でも同じコンセプトの賃貸マンションを開発しており、今後3年で5棟の供給を予定する。
東京23区ではコロナ禍に伴う暮らし方・働き方の変化を背景に、2021年には転出した人が転入した人を上回る「転出超過」となった。ただ企業の対応が分かれる中で働き方も多様化。都心の賃貸マンションや都心・郊外の分譲マンションの人気は根強く、住まいにワークスペースを設けるニーズは高まっている。近年の竣工物件では、こうした声を反映したものも多い。