最大4万台のAIカメラ連携へ、三菱地所が目指すビル群管理の未来
三菱地所は東京の大手町・丸の内・有楽町地区に、人工知能(AI)で画像を解析する次世代カメラシステムを導入した。所有・運営するオフィスビルなど約20棟のカメラを一括で制御・管理。混雑状況や異常の把握・検知のほか、防犯・災害対応などでの効果を検証する。個人情報の保護を徹底した上で、天候や店舗の売り上げを取り込んだ統計データとしても活用を検討。働く人や訪れる人が安心・安全・快適に過ごせる街を仕上げる。
次世代カメラシステムは、大丸有エリア地下の洞道に張り巡らされた光ファイバー閉域網とデータセンター、ビデオマネジメントシステム(VMS)を活用して構築。ビルごとに対応する従来と異なり、エリア全域での情報連携を可能にした。2022年度末までに14棟のカメラ約4200台を接続。街路を含め、最大4万台を連携させる計画だ。
三菱地所DX推進部の長井健輔主事は「床を貸すだけでなく、付加価値も磨く。デベロッパーだからできる仕事だ」と自信を示す。思い描くのは、オンラインとオフラインを融合した街づくりだ。まず安心・安全機能を拡充し、施設管理を効率化。その上でデータを分析・活用する“次世代型”施設を形にし、就業者・来街者の満足度向上につなげる。
例えば安心・安全の向上では、混雑状況やサポートを必要とする人を把握したり、危険行為や異常を早期に発見・対応したりする運用をスタート。新しいオフィスビルや商業施設が増える一方で、慢性的な人手不足を解消できずにいる施設管理や警備、清掃といった分野で省人化と質の維持を両立させる効果を見込む。ロボットとの連携も模索する。
こうして把握したデータは、就業者や来街者への情報発信にも役立てていく。大丸有エリアで使える専用のアプリケーション(応用ソフト)やデジタルサイネージ(電子看板)を通し、平時はフロアやエリアごとの混雑状況など、災害発生時や危険行為が確認された際には警報を鳴らしたり被害状況や避難経路などを即座に提供する使い方を想定する。
中長期では、建物内外の通行量調査や人流・属性の解析も計画。モザイク処理や解析後の速やかなデータ破棄など徹底した個人情報保護・管理により、集めたデータを販促など店舗運営に生かす。利用者が同意すれば、顔認証による利用や支払いも可能になる。就業者・来街者の満足度を高めることで、街全体の競争力を引き上げていく方針だ。(堀田創平)