マンション新時代、若者惹きつける「住む+α」の仕掛け
コロナ禍に伴う働き方・暮らし方の変化を経て、付加価値を高めた賃貸マンションが広がっている。特に進化しているのが、底堅い需要を誇る都心部だ。三菱地所レジデンスは2022年から職住を一体化させた新たなマンションシリーズを展開。三井不動産レジデンシャルや東急不動産も、多様化したニーズを具現化した“理想のライフスタイル”に向け工夫を凝らしている。(堀田創平)
テレワーク対応/屋上快適
三菱地所レジデンスは共用部に約120平方メートルものコワーキングスペースを設けた「ザ・パークハビオSOHO代々木公園」(全81戸、東京都渋谷区)を仕上げた。同シリーズとしては東京・大手町に続く第2弾で、会議室や個室ブースも設置。森山健一常務執行役員は「コロナ前に企画・立案した物件だが、今のニーズにもマッチしている」と自信を示す。
屋上をテラスとして自由に利用できる点も訴求する。電源やWi―Fi(ワイファイ)はもちろん、カウンターテーブルやベンチ、さらにドッグランまで設けた。賃料は周辺相場より高めとなるものの「スタートは順調」(同社担当者)。募集中の第1期(37戸)では、すでに29戸で申し込みがあったと明かす。代々木公園の緑や新宿の高層ビル群を望む眺望の良さも評価されているようだ。
6月に竣工した「ザ・パークハビオSOHO大手町」(東京都千代田区)も人気で、足元で55%が入居済み。スタートアップなど4社の法人登記もあり、開発コンセプトとして掲げた「通勤時間ゼロのライフスタイル」が共感された格好だ。これを受け、三菱地所レジデンスは24年までに東京・祐天寺と南青山、横浜にも同シリーズを展開する戦略を打ち出している。
三井不動産レジデンシャルが3月に竣工した「パークアクシス錦糸町スタイルズ」(東京都墨田区)もユニークだ。ワークスペースに加え、キッチンや洗濯機も共用部に集約。低価格での朝食・夕食や、家具のサブスクリプション(定額制)サービスも用意した。一方の専有部はユニットバスや洗面、トイレを含む約15―18平方メートルと最低限にとどめ、特に若年層に注目されている。
「コンフォリア」シリーズを手がける東急不動産も、一部でパナソニックによる家電のサブスクリプションサービス「ノイフル」を導入している。背景にあるのは「必要な時に必要なモノを借りればよい」という価値観の浸透だ。最先端の家電を備え付けることで入居者の満足度を高めるとともに、家電の“循環”によって住み替えなどに伴う廃棄の低減につなげる考えだ。
東京23区ではコロナ禍の21年に、転出した人が転入した人を上回る「転出超過」に陥った。ただ最近ではテレワークや在宅勤務、そしてこれらをオフィス勤務と組み合わせた「ハイブリッドワーク」も定着し、都心の賃貸マンション需要が押し上げられる傾向にある。交通の利便性はもちろん、共用部・専有部と合わせた住まい全体の価値を見直す動きも進みそうだ。