大幅省人化を実現した自動車向け樹脂製品メーカーとロボットの軌跡
スターライト工業(大阪市旭区、西郷隆志社長)は、山口事業所(山口市)で自動車メーカー向け大型樹脂製品を手がける。ワイパー下部の機能部品「カウルグリル」、フロントグリル内部の空力を改善する「アクティブグリルシャッター」や「バンパースティフナー」などを主力製品とする。同社がロボットを導入したのは、2020年8月。バンパースティフナーへクリップを組み付ける自動装置が始まりだった。(広島・青木俊次)
山口事業所では、カウルグリルやバンパースティフナーを年約30万台、アクティブグリルシャッターを年40万台強を生産している。これらの成形品は夜間生産できるが、完成には部品の取り付け作業が必要だ。例えば、バンパー下部に取り付けるバンパースティフナーには、樹脂や金属のクリップを組み付ける必要があるが、現在は人手によるため作業は日中に限られる。このため時間ロスが発生し、仕掛品を置く場所も要るなどムダが生じていた。
そこで生産技術課と製造部の計3人が設備会社と連携し、多関節ロボットやパーツフィーダーなどによる自動組み付け機を開発、20年8月に稼働した。独自設計のハンドが計10個のクリップを成形品に組み付け、その有無や状態を自動検査する装置だ。
これにより作業者は2人から1人に減らすことができ、作業時間も半減した。「期待通り。仕掛品の仮置き場12平方メートル分のスペースが空いた」と、佐伯良隆執行役員山口事業所長は話す。
次に着手したのは、アクティブグリルシャッターにおける組み立て、検査、梱包(こんぽう)、搬送の各工程の自動化だ。
成形品に14点のフラップを組み付け、その状態や可動部の動作を確認後、パレットに24個ずつ梱包、無人フォークリフトでパレットを運ぶ自動装置で、22年春に稼働した。一連の工程の作業者を5人から3人に省人化するなど、ここでも期待していた成果を達成。現在は、顧客の新たな要請の対応に追われている。
4月には、サイドステップを保護する部品「サイドステップモール」に20点のファスナー部品を30秒以内に自動で組み付ける装置も稼働した。多関節ロボット4台とパーツフィーダー2台で、4分割された同成形品の所定位置に20個のファスナーを組み付ける自動機だ。
同成形品が本格的な量産になれば作業者は23人から8人へと大幅な省人化が可能となり、ファスナーを1個ずつ押し込む作業で指を痛めることもなくなるという。ただ現状は「当初予定の生産量に達しておらず、自動化によるメリットが出ていない」(佐伯執行役員)と、生産の早期回復を期待する。
新車種やモデルチェンジによる部品の仕様変更や、自動運転に関する法改正などへの対応が常に求められており、「コストに応じて自動化を進めるが、今後は多品種少量品の自動化にも取り組んでいきたい」(同)と強い意欲をみせる。