自動車部品の加工工場で活躍、5台の産業用ロボットが担う役割
エンシュウで自動車のエンジン部品や足回り部品などを手がける部品加工工場(浜松市南区)では、5台の産業ロボットが部品搬送などで活躍する。高温のダイカスト製品など手作業では難しい搬送を担う。ガントリーローダーや同社主力製品のマシニングセンター(MC)内蔵型搬送装置「EーLoader(ローダー)」などと使い分けながら加工現場の自動化を進めている。今後は検査工程などにも導入範囲を広げる方針。(浜松・市川哲寛)
本社工場(浜松市南区)の一角にある部品加工工場では、30年程度前から産業ロボットが活躍している。MCなどを用いた加工の工程間のワーク搬送での省人化が主な狙いで、「機械加工工程同士を結んでいるケースもある」(田代繁甲執行役員)と、さまざまな用途で活用する。数百度Cの熱を持つ加工対象物(ワーク)搬送での危険を回避しながら、作業安定性や生産性向上を図っている。
新規受注品を加工する新ラインでは「適材適所で自動化を積極的に進めている」(同)と強調する。
産業用ロボットに加え、ガントリーローダーやEローダーなどの選択肢の中から、生産ラインのコンセプト、作業スペースなどの制約、費用対効果などを見極めてロボットを使うべきだと判断すれば導入する。
複数の機械の工程を受け持ったり、段取りを最小にしたりしてロボットのメリットを生かす。ワークの種類ごとでロボットとローダーを使い分けるほか、「併用ラインなどにして同じワークでも使い分けることがある」と田代執行役員は説明する。
自動化ラインは、同社のMCなどを用いた加工システムをアピールするためのショールーム的な役割も果たす。「ロボットとその他の装置を比べられるようにするなどして、MCを売り込む営業にも生かしている」(同)とする。
汎用性を重視して導入するロボットを決めている。多関節ロボットはより多くの作業に使えるため、「どれだけ仕事を押し込めるかが重要」と田代執行役員は説く。機械の加工時間や搬送時間のバランスを取り、いかに休まずに働かせるかを考える。
「将来はさらにロボットの用途が広がり、使い勝手が高まるだろう」(同)とする。検査工程での2022年度以降の導入を目指し、21年度中にテストを始める計画。
カメラと組み合わせた多関節ロボットにセンサーや触覚の機能を持たせ「付加価値を持たせる」と田代執行役員は構想を明かす。まず重量20キログラム程度の複雑形状部品の検査に活用し、徐々に対象を広げる考え。また運搬では生産ライン間をつなぐ自律型無人搬送車(AGV)の活用を進める方針だ。
シミュレーションソフトで干渉やサイクルタイムを検証できるようになったが、作業ポイントを結ぶティーチングは時間と手間がかかる。ロボット作業の担当者を21年度で4人増やすなど人材拡充を図っている。