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内装業者を倒産の道に引き込んだ想定外の損害賠償

内装下請け、コロナ禍も直撃

匠屋は、1992年(平成4)2月に設立した内装工事業者。百貨店や大型商業施設などにおける、アパレル店やブティックなどの新規出店・リニューアルに伴う内装工事を主力に、マンションや戸建て住宅のリフォーム工事なども手がけ、2015年6月期には年売上高約11億9000万円を計上。その後も年売上高は10億円前後で推移していた。

他方、下請けに特化していたことで、同業他社との競争も厳しく、収益は低調に推移。また、施工の大半は協力業者を利用していたことで外注費も重荷となっていた。

そのようななか、高級宝飾品ブランドに対し約1500万円の損害賠償金の支払いという、予想外の出費を余儀なくされる。工事の納期に間に合わなかったことによるものだった。申立書によると、この納期トラブルは元請けのずさんな納期管理も一因だという。匠屋は受注当初から、本件工事の納期が無謀であることを訴えていたが、楽観的な工事計画が見直されることはなかった。さらに、空港内の出国審査後の免税店だったこともあり、道具などのチェックも厳格だったうえ、厳しい納期を増員でカバーというわけにもいかなかった。

そして20年以降は、新型コロナウイルス感染拡大の影響でアパレル店やブティックの新規出店やリニューアルが激減。利益率が高かった内装仕上げ工事の件数が落ち込んだことで、不採算が続いてしまう。

また、同社は長らく粉飾決算に手を染めていた。大口取引先からの受注を契約段階で売り上げに計上。前倒し計上により利益を積み増し、赤字決算の黒字化が常態化していた。このような会計処理により根本的な経営課題から目をそらし続けてきたことで、当社は窮地に追い込まれていった。

可能な限りの金融支援を得て事業継続を模索していたものの、22年4月12日付で事業を停止し、6月13日に破産手続き開始決定を受けた。(帝国データバンク情報部)

日刊工業新聞 2022年12月01日

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