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電子機器消費低迷で受注減、半導体向け銅需要に調整色

国内で半導体向け銅需要に調整色が出始めた。巣ごもり消費の一巡や中国のスマートフォン需要の不振など、最終用途となる電子機器の消費が低迷していることが波及し、一部で銅条(銅コイル)の受注が急激に落ちた。半導体需給の緩和で自動車向け銅需要の改善期待が浮上するが、積み上がった車載部品在庫の消化には時間を要しうる。ドル安・円高の進行で国内銅価格には下押し圧力がかかりやすく、銅材の値崩れにも備えを要しそうだ。

日本伸銅協会によれば、国内の9月の伸銅品生産量(速報値)は前年同月比6%減の6万1770トンと9カ月連続のマイナス。好調だった2021年の反動や半導体不足に伴う自動車減産の影響などで前年割れが続いたが、足元では需要の支えだった半導体向けにも調整の兆しがある。

家電など巣ごもり消費の一巡に加え、景気不調の中国ではスマホ出荷が低迷し、米半導体工業会(SIA)によれば9月の世界の半導体売上高3カ月移動平均は前年同月比3%減の470億ドルと、2年8カ月ぶりの前年割れとなった。影響は材料市場に波及し、「銅条メーカーからは半導体向け需要が劇的に落ちたと聞く」(東京都伸銅品商業組合の天野晴信マーケットリサーチ委員長〈豊栄商事常務〉)とされ、「半導体は自動車に比べサプライチェーン(供給網)が短く急に(受注が)止まりやすい」(同)と警戒感が高まる。

また、半導体需給の緩みは、自動車生産の復調を通じた車載向け銅需要の改善要因となりうるが、先行きは晴れない。伸銅品メーカーでは「自動車生産計画の下方修正が続いたことで顧客の部品在庫が積み上がったほか、さらなる計画見直し報道もあり先が読みにくいが、いずれかのタイミングで在庫消化が進み需要が回復すると期待する」(日本伸銅協会の宮崎庄司副会長〈神戸製鋼所執行役員〉)との見方にとどまる。

銅の相場も不透明感が拭えない。春以降の国際相場の下落時には、ドル高・円安に相殺されて円建て銅価格の下げ幅が限定されたが、米国の利上げ鈍化観測を受けて円高が進む局面が増えた。足元では中国の新型コロナウイルス感染者の増加で国際相場も弱含み、伸銅品問屋では「直近3カ月程度は(円建て)銅価格が比較的安定し在庫が持ちやすかったが、足元は価格が下がってきて先が見えにくい」(東京都伸銅品商業組合の西山栄一マーケットリサーチ委員〈西山商店社長〉)との声がある。

21年は、新型コロナ感染対策に伴う通信機器需要の増加や主要国の大規模な財政出動・金融緩和を受けて銅需要は勢いづいたが、22年はその反動が出ている。脱炭素に伴う電気自動車(EV)の普及やデジタル化の進展で、長期的には銅需要の増加基調が見込まれるものの、当面は欧米の金融引き締めが重なることもあって需要と相場の調整に対応する必要がありそうだ。

日刊工業新聞 2022年11月25日

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