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中古EV適正価格は?流通拡大に備える中古車大手たち

電池劣化診断 短時間化カギ
中古EV適正価格は?流通拡大に備える中古車大手たち

車両検査(イメージ=オークネット提供)

中古車業界で電気自動車(EV)の流通拡大に備えた動きが広がっている。中古車大手では、EVの残存価値を評価する技術開発や基準作りの取り組みが活発化。車載電池の劣化度合いを短時間で正確に評価する技術開発や、EV車両の検査・整備について新たなノウハウの習得や設備投資が進んでいる。EVは電池性能の劣化への不安などから中古車の価格が下がる傾向にある。適正価格による中古車の流通体制を整備し、EVの普及を後押しする。(増田晴香)

中古車の取引価格は年式や走行距離、機能状態(整備状況や不具合の有無)などを勘案した上で、競売相場を参考に決まる。中古EVの取引価格を適正水準にしようと、競売各社は評価技術の確立を急いでいる。

オークネットは、2024年の導入に向けてミライラボ(東京都八王子市)と共同でリチウムイオン電池の評価基準や技術の確立を推進。放充電によるバッテリー残存性能の検査は数時間かかり、短時間での診断が事業化の課題となる。

開発中の技術は、メーカーごとに異なるバッテリー特性のデータを蓄積する。このデータをもとに、短時間の検査から独自のアルゴリズムでバッテリーの劣化度合いを予測。中古EVの価値を数段階で評価する。藤崎慎一郎社長は「業界に先駆けて検査体制を構築し、適正価格での流通を促すことでEV普及に貢献したい」と話す。

ユー・エス・エス(USS、愛知県東海市)もパートナー企業と評価技術の共同開発に着手した。現状、中古EVの出品では、メーターパネル部に表示された電池の状態を車両情報として公開している。「電池の状態がEV価格を左右するのは確実」(池田浩照常務)とし、残存性能を正確に把握できる仕組み作りを目指す。

また、現時点でEVの車両構造はガソリン車から大きな変化がないが、今後は駆動系を中心に従来とは違った構造が増えると予想。評価に必要な知見を深める。

EVの普及・拡大にはアフターサービスの充実も欠かせない。中古車販売チェーン「ガリバー」を運営するIDOMは、EVや先進運転支援システム(ADAS)搭載車両などのトラブルに対処できるよう、全現場社員を対象に育成プログラムを実施。整備工場ではADASや輸入車向けの故障診断機器を完備するなど投資を積極化。EV向けには200ボルト充電用電源の配置を検討している。

同社は中期経営計画のテーマの一つに「中古EVへの乗り換え推進」を掲げる。中古EVの適正な評価に向けても高速性能診断など、多様な技術や検査基準の構築に取り組む方針。市場相場に応じた価格での中古EVやハイブリッド車(HV)の小売りを目指す。

日本中古自動車販売協会連合会によると、20年の国内の自動車保有数は約8200万台で、このうちEVは約11万台(0・15%)にとどまる。中古EVの価格形成の動向次第で新車EVの売れ行きも左右されそうだ。

日刊工業新聞2022年8月1日

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