ニュースイッチ

日本のプラスチック産業が欧州で存在感を示す意義

プラスチック産業の新しい旅 #05
日本のプラスチック産業が欧州で存在感を示す意義

東レはPPSで欧州のxEV市場を開拓。複数の開発プロジェクトを進める

日本からの世界最大のプラ・ゴム展示会「K2022」への出展は60社超に上り、このうち半数程度が素材系企業だった。住友化学が展示したアクリル樹脂リサイクル技術は日本で緒に就いたばかりながら、早くも欧州で引き合いがあるという。住友化学ヨーロッパ(ベルギー)の福田加奈子社長は「技術は社会に出て初めて役立つ。日本には良い技術が多く、欧州は実現できる場だと思う」と期待を語る。

東レは世界トップシェアを持つスーパーエンジニアリングプラスチックのポリフェニレンサルファイド(PPS)で、欧州の電動車(xEV)市場を開拓中。現在複数の開発プロジェクトを抱えており、「K」で加工例を紹介してさらなる受注拡大を狙う。一般的にPPSは硬くもろいが、東レは柔軟なPPSなど幅広い品ぞろえも持つ。

これを生かし、多様なソリューションを提案できることが同社の強み。欧州の景気は後退局面にあるが「開発案件は増えておりアグレッシブにやる」(同社担当者)とする。

また、同社はマテリアル・インフォマティクス(MI)技術を使ったデジタルサービスも紹介。顧客が要求特性を入力するだけで最適な樹脂選定を支援するサービスで、開発期間の短縮を図れる。

xEVでは樹脂への要求が複雑化することに加え、欧州はデジタル化が進んでいるため、期待を寄せている。同サービスはリサイクル性も予測できるといい、資源循環のニーズにも応える。

このほかにも、多くの日本企業が自動車や環境を切り口にした展示を展開した。エンプラ大手のポリプラスチックス(東京都港区)はサステナブル(持続可能)なエンプラ製品群の構想を紹介した。販売中のバイオメタノールを原料に使用したポリアセタール樹脂をはじめ、開発中のものなど多岐にわたる。

発泡プラを展開するJSP(同千代田区)は、廃漁網などからリサイクルした原料を用いた発泡プラ製品を展示した。

欧州景気は冬の時代に入る一方、ロシア産ガス依存から脱却するため資源循環や再生可能エネルギーへのシフトを推進する施策を一層加速している。欧州で存在感を示すことは、世界的な環境関連の需要をつかむための第一歩となる。

日刊工業新聞 2022年11月08日

特集・連載情報

プラスチック産業の新しい旅
プラスチック産業の新しい旅
プラスチック産業が循環利用に変わろうとしています。10月26日に閉幕した世界最大のプラ・ゴム展示会「K2022」の各社の展示から次の成長の道を探すプラ産業の“旅”を追います。

編集部のおすすめ