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三菱ケミカル・旭化成・住友化学も減産…プラスチック原料の生産調整が続く背景

三菱ケミカル・旭化成・住友化学も減産…プラスチック原料の生産調整が続く背景

三菱ケミカルグループのMMAプラント

プラスチック原料である基礎化学品の生産調整が続いている。三菱ケミカルグループは、世界トップシェアを持つアクリル樹脂原料(MMA)製造設備の7―9月の稼働率を68%前後と見込む。UBEはナイロン樹脂原料の海外拠点の稼働率を70―80%とする。旭化成住友化学も主要な基礎素材を減産中。低調な生産は中国経済の減速や世界的な景気後退懸念を反映しており、回復時期の予想は難しい状況だ。(梶原洵子)

三菱ケミカルグループのMMA製造設備の稼働率は1―3月の55%を底に、4―6月に65%へ回復。7―9月は68%前後を見込むものの、依然として低水準だ。日本や中東など世界各地に持つ拠点の中でも欧州はエネルギー価格高騰の影響が著しく、英国では定期修理後の稼働再開を延期。「8月中に再開させたい」として、ガス価格と需要動向を見て時期を精査する。

UBEはナイロン原料であるカプロラクタムのスペイン拠点の稼働率を70%、タイを80%としている。稼働引き上げ時期について「9月の可能性はなくなってきた。見通しは立っていない」のが現状だ。

旭化成は樹脂・繊維原料のアクリロニトリルの全製造拠点で稼働率80―90%程度の範囲内で生産調整している。住友化学もシンガポールで、エチレンなどのオレフィン類とその樹脂、MMAの生産設備の稼働率をそれぞれ90%程度とする。

三井化学はポリカーボネート樹脂などの原料のビスフェノールAの生産調整を実施中。「中国・上海の都市封鎖(ロックダウン)後の回復を見極めている状況」という。

一部の素材は2021年秋から海外市況が下落。原燃料価格の一層の高騰もあって、多くの素材の採算が悪化している。今春には上海で新型コロナウイルスの感染対策のため2カ月超の都市封鎖が行われ、全般的に化学品需要が減速した。6月の封鎖解除後も、各社の予想より回復ペースが遅い。

さらに、世界的な景気後退懸念は強まっており、現時点で回復時期の見通しは難しい。東ソーはウレタン樹脂原料などで生産調整の予定はないものの「今後、採算状況を考慮し、生産調整も選択肢」とする。

一方、昭和電工は22年上期のエチレンクラッカーなどの定修後、80%稼働としていたが「下期(7―12月)はそこまでの減退は見ていない」(染宮秀樹取締役常務執行役員)という。他素材では日本製鉄が需要回復を見越し、高炉の8月末の再稼働を決めた。鉄鋼と化学は建築や自動車など同じ市場に製品を供給しており、一部の需要は連動する。

基礎化学品は21年度まで化学各社の業績を押し上げてきた。各社は22年度を期初から弱く見ているが、需要減退が続けば下振れる可能性もある。世界的な景気動向や供給網正常化による自動車などの回復が焦点となる。

日刊工業新聞2022年8月23日

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