プラスチック産業が示す「循環経済へシフト」の本気度
プラスチック産業は一方通行の使い捨てから循環利用へと変わろうとしている。ドイツ・デュッセルドルフで3年に1度開催され、10月26日に閉幕した世界最大のプラ・ゴム展示会「K2022」は変化の最先端を示す。「K」の各社の展示から次の成長の道を探すプラ産業の“旅”を追う。
K2022の出展者は、プラ加工関連設備や化学メーカー中心に3000超。感染対策で中国からの来場は減少したものの、来場者は18万人近くに上った。特設会場ではプラリサイクルの実機が動かされ、前回以上に循環型経済(サーキュラーエコノミー)に焦点が当たっていた。
ほぼ全てのブースで循環経済に関係する技術・製品を展示。「欧州は日本が思う以上に環境の取り組みに対し本気だ」と住友化学ヨーロッパの福田加奈子社長は指摘する。
お膝元であるドイツのBASFやランクセス、コベストロ、中東のSABICや韓国のLG化学などが巨大ブースを構え、BASFの面積は1500平方メートル超と最大だった。
BASFの担当者は「資源循環に向けて、いろいろなアイデアを考えている。そのプラスチックの“旅”を表現した」と話す。循環はプラを使う時から始まる。同社は仏シトロエンのコンセプトカー「OLI」のシートでリサイクル性を考え、単一プラ素材で制作した。パーツごとに設計を工夫し、強度やクッション性などを実現した。
Kでは展示しなかったが、BASFはOLIの再生段ボール製ルーフの開発などにも協力。大人がルーフの上で日光浴できるほどの強度で「サステナブル(持続可能)を楽しいイメージにしたい」(BASF担当者)。
使い終わったプラは砕いて溶かす方法(マテリアルリサイクル)で再利用できれば、消費エネルギーは少なくて済むが、品質が落ちる。添加剤「バレラス」は再生後のプラの品質向上を助ける製品群だ。同社は添加剤の販売と合わせ、リサイクルしやすい部品設計やエンジニアリングも支援する。「循環経済はBASFの総合的な化学の力を生かせる」(同)と力を込める。
この循環経済へのシフトは他社でも同様だ。LG化学はリサイクルやバイオ、生分解素材を新ブランド「LETZero」として提案。プラ加工の独ペッペルマンはブース壁に「PCR(ポスト・コンシューマー・リサイクル)」と大きく表示し、再生プラの利用をアピールした。
また、電気自動車(EV)向け製品の展示も多く、SABICは米ルーシッド・モーターズの高級電気自動車(EV)セダン「ルーシッド・エアー」に貢献した25以上の材料技術を紹介した。
「K」は日本の展示会と違い、談話スペースが広いのも重要な特徴だ。循環経済は1社では実現できない。コンセプトを発信し、実現のための仲間と出会う。交流から解決策を生み出す場として今後も重要となりそうだ。