日本製紙と三井化学が事業化へ、新バイオマス材の正体
化学各社などが木質や草の天然繊維とプラスチックとの複合材料の拡大を進める。日本製紙と三井化学は8日、木質バイオマスのセルロース繊維を主原料とする新たな成形材料の事業化に向けて連携すると発表した。2025年度までに複数件の受注を目指す。脱炭素社会に向けバイオマス材料に注目が集まる中、大手同士のタッグで安定品質かつ大量供給できる体制とし、将来の大型事業へ育成する。(梶原洵子)
日本製紙と三井化学が取り組む新材料は、微細なセルロース粉末を50―80%超の比率でポリプロピレン樹脂(PP)へ高配合した。化石資源の利用を減らし、ライフサイクル全体で温室効果ガスの排出削減に寄与する。天然素材を大量に使用しながら成形性は一般的なPP混練(コンパウンド)と同等で、工業材料として使い勝手が良い。セルロース配合で強度を高め、薄肉化により軽量化にも寄与する。
22年度から一部顧客へ、23年度から本格的にサンプルワークを始める。用途に合わせた開発や改良を行い、自動車や家電の部品、日用品、容器、建材など幅広い市場を開拓する。生産体制は受注規模に応じて整備する。
日本製紙は数十年来、紙原料の木質パルプからセルロース粉末を製造し、安定した品質と供給源を強みとする。樹脂コンパウンド技術と樹脂のグローバル販売網を持つ三井化学との連携で「本気で市場を取りに行く」(三井化学担当者)。
近年、天然繊維と樹脂の複合材料の提案が増加している。三菱ケミカルグループは、一年草の「亜麻」などの繊維と樹脂の複合材を開発する米リングローブへ出資。22年度中の事業化を目指す。リングローブ幹部は「近い将来、自動車や家具で用いられる多くの木材やプラスチック材の代替として使われるようになる」と自信を語っている。
ほかにも、住友化学は欧州子会社で間伐材由来の木材繊維とPP樹脂の複合材料を開発。パナソニックもセルロース高配合プラに取り組む。
天然繊維はバイオプラとの配合により、化石資源の使用比率をさらに下げられる期待もある。天然素材の物性のバラつきなどを管理できれば、有望な工業材料となりそうだ。