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新型コロナ9分で検出できる、理研など「全自動装置」開発

理化学研究所の渡辺力也主任研究員らは、新型コロナウイルスを全自動で高感度・迅速検出できる装置を開発した。試料調製から検出まで全て自動で9分以内に完結でき、PCR検査と同程度の感度で検出できる。さらに陽性判定だけでなく、変異株の種類も判別可能。PCR検査や抗原検査と同等となる1検査当たり200円程度で調べられる。新型コロナ以外の感染症ウイルスやがん細胞などの検出にも応用できると期待される。

装置はシスメックスと富士フイルムメディアクレスト(東京都羽村市)との共同開発で、2022―23年度中にも製品化・販売予定。価格は未定。

同グループは21年度にウイルスのリボ核酸(RNA)を早く安く検出できる「SATORI法」を開発した。ゲノム編集技術「クリスパー・キャス9(ナイン)」を応用し、ウイルスRNAの有無を蛍光の情報に変換して1分子単位で識別できる方法。だがウイルスの検出に時間がかかり、感度が低く手間がかかる課題があった。

そこでSATORI法で使う酵素を変え、磁力を使ってウイルスを一つずつチップに分注する仕組みを構築したところ感度が1400倍向上した。さらにウイルスを分注するチップをCDの成型技術を使って作製したことで低コスト化を実現。検査試薬代とチップを含めて1検査200円程度で検査できる。また変異株が識別でき、PCR検査とほぼ同精度で判定できる。新しい変異が見つかった場合でも、同装置では3週間ほどで識別対応できる。これらの技術をつなげ、試料調製から検出まで全自動で9分以内に完結できる。

東京大学と京都大学、東京医科歯科大学、自治医科大学との共同研究。成果は27日、オンライン科学誌に掲載された。

日刊工業新聞2022年5月27日

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