文科省が導入「記述問題を採点するAI技術」の仕組み
文部科学省は小中学生向けに提供しているオンライン学習用の「文部科学省CBTシステム(MEXCBT、メクビット=用語参照)」に人工知能(AI)技術を利用した記述式採点機能を導入する。現状、記述式の評価は人手に頼っている。AIにより低コストで安定した採点が期待でき、高度な教育サービスを受益する機会が広がる見通し。メクビットの登録者は300万人。
理化学研究所革新知能統合研究センターの乾健太郎チームリーダーらが開発した記述式の採点AIをメクビットに導入する。2022年度は数問を用意し、AI採点に教員や生徒が触れる機会を設ける。フィードバックを受けて学力調査での採点支援にAIを活用する方針だ。採点の負荷を軽減しつつデータを集め、AI採点に適した良問を作る。
データとAI採点問題の数が増えると、普段から自宅学習などで記述式の問題に取り組めるようになる。回答文を書くことで論理的に読み書きする力が養われる。理研の採点AIは回答文の中で押さえるべきポイントなどの評価基準ごとに採点モデルを作る。項目別に根拠を示し、ユーザーの納得を得やすい。
一方で1問の記述に対して複数の採点モデルを用い、1問ごとに約1000件のデータが必要になる。メクビットの潜在ユーザー数は1000万人規模。国のシステムとして稼働させることでデータが集まり、質の高い学習支援が可能になる。
記述式問題については大学入学共通テストへの導入を見送られた経緯がある。記述式問題導入に向けて新しい選択肢を用意できる可能性がある。
【用語】MEXCBT=文部科学省などが開発するコンピューター上で問題を解いて学習するCBT(コンピューター・ベースド・テスティング)システム。政府の「GIGAスクール構想」で生徒一人に1台の学習端末が配布され、MEXCBTは問題や学力調査環境を提供する。
日刊工業新聞2021年4月15日