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ソニー・パナ・日立…電機メーカーは部品不足の今期業績への影響をどう見込むか

電機大手8社の2023年3月期の連結業績予想は、売上高予想を公表している7社のうち、グループ再編の影響がある日立製作所と東芝を除いた5社が増収となる見通しだ。背景には市況の回復や円安の効果などがある。利益面では増収による増益効果を見込む。一方で部材価格や物流費の高騰、半導体をはじめとする部品不足、中国の都市封鎖、ウクライナ情勢などの影響がどの程度出るのか読みづらく、不透明さを残している。

ソニーグループはテレビやデジタルカメラなどの製品事業で、中国の新型コロナウイルス感染拡大に伴って工場が稼働停止するなど、300億円の営業減益影響を織り込む。供給網の正常化には「3カ月を要すると想定している」(十時裕樹副社長)。日立製作所はIT事業やエネルギー事業などで半導体不足や部材高騰の影響を受けるが、事業成長や収益性向上などで増益を計画。影響が大きい自動車向けも下期の市況回復により増益を見込む。

三菱電機は22年3月期に素材価格や物流費の増加が想定を上回り、自動車機器事業では3期連続営業赤字の主因となった。23年3月期は「21―22年度のコストアップ分の約40%を価格転嫁できるよう顧客と相談し進める」(増田邦昭常務執行役)方針。東芝は半導体不足や輸送費高騰などで330億円の営業減益影響を見込むが、販売単価引き上げや商品構成見直しで556億円を上積みする。

パナソニックホールディングス(HD)は価格転嫁などで影響の低減を図るが、家電などのくらし事業や電池事業には影響が残る見通し。半導体や部材不足の影響は改善傾向だが、ウクライナ情勢もあり原材料費高騰の影響は拡大するとみている。NECと富士通も部材高騰に対し、価格転嫁といった対策を継続する。シャープは中国の都市封鎖やウクライナ情勢の影響を含め事業計画を精査するためとして、23年3月期業績予想の公表を6月に延期した。

各社では価格転嫁や商品構成見直しなど収益改善の取り組みの継続に加えて、今後も起こり得るパンデミック(世界的大流行)や国際紛争といった想定外リスクに備え、各事業の環境変化への耐性をいかに磨くかが重要になっている。
日刊工業新聞2022年5月17日

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