5G時代のスマホ部品狙う、山寿セラが大口径ウエハー量産
山寿セラミックス(愛知県尾張旭市、佐橋家隆社長)は、スマートフォンなどに使われる表面弾性波(SAW)フィルター向け材料で直径8インチ(約20センチメートル)の酸化物単結晶ウエハーを量産する。同ウエハーの主流は同4インチだが、第5世代通信(5G)拡大の中でSAWフィルターの需要増を見据えて大口径化を実現して差別化する。約20億円を投じ、量産体制を確立する。2023年には月産1万枚の体制にする計画だ。
同社は同8インチのニオブ酸リチウム(LN)ウエハーの量産を始めたほか、22年内をめどにサンプル出荷する同8インチのタンタル酸リチウム(LT)ウエハーを本格量産する体制を整える方針。結晶を手がけるセントレア結晶材料研究所兼工場(愛知県常滑市)と加工の瀬戸工場(同瀬戸市)、研磨の本社工場(同尾張旭市)で生産設備などを増強する計画。
自動運転など将来的に5Gの広がりが想定され、特定周波数帯域の電波を取り出す電子部品のSAWフィルターの需要が拡大するとみて対応する。LNとLTでは温度への対応の特性に違いはあったが、LN関連では性能向上の工夫を施すなど両製品ともに需要が増えるとみている。
現在、LNやLTウエハーの主流は同4インチだが、同6インチへの移行が進みつつある。
ただ同社は先行して同8インチ製品を量産することでSAWフィルターの生産効率向上に一早く貢献する構え。同8インチ製品では、結晶育成で異状成長が起きやすく加工時に割れやすいなどの課題があった。成長環境の制御を最適化するなど工夫した。
同8インチのLTやLNのウエハーはシリコンウエハーの主流と直径が同じで貼り合わせることが容易。高い周波帯に対応できる高性能な「接合型SAWフィルター」を実現する材料として需要増を期待する。
日刊工業新聞2022年3月30日