北米でグリーン水素製造に参入する岩谷産業の深謀遠慮
岩谷産業は2023年度末までに北米で、製造工程で二酸化炭素(CO2)を排出しないグリーン水素の製造に参入する。再生可能エネルギーを使った水素製造に取り組む企業との連携や製造拠点の設置などを検討する。製造拠点や水素ステーションを通じ、環境規制の厳しい米カリフォルニア州などの地域へ供給する。中国でもグリーン水素製造を検討する。国内販売シェア約7割の水素事業を支える製造・供給ノウハウを生かし、海外事業拡大の足場を築く。
米国市場では燃料電池自動車(FCV)の普及台数が日本を大きく上回り、工業用分野でも製造業を中心に水素需要が見込める。岩谷産業は米国でFCV向けの水素ステーションを4カ所運営しており、23年度末までに計23カ所に増やす計画。ただ米国では水素を調達に頼っており、製造・供給に参入し、事業基盤を強固にする。
参入方法を複数検討しており、22年度をめどに方針を固める。米国やカナダで水力エネルギーやバイオマスなどを使ったグリーン水素製造に取り組む企業との提携、企業連合、資本業務提携などを視野に入れる。
一方、中国では工業用の圧縮水素を製造・販売しており、2カ所目となる圧縮水素製造プラントを浙江省で建設中。グリーン水素の製造・供給については、技術力や環境貢献度の高さを示せるような形での参入を検討する。23年度末までに日系企業や現地のパートナー企業などと連携した製造・供給の計画を具体化したい考え。
岩谷産業は21―23年度の3年間に水素関連事業で計600億円規模の投資を計画。液化水素の販売数量は23年度に20年度比34・3%増の9000万立方メートルを目指している。海外で事業の足場をつくり、23年度以降の拡大につなげる。
日刊工業新聞2021年12月10日