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トヨタ、岩谷産業、エノモト…脱炭素に向け水素利用が加速し始めた!

水素利用に向け企業の取り組みが加速している。トヨタ自動車が9日、燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」の新モデル発売を発表したほか、岩谷産業は2021年度から3カ年の中期計画で300億円以上の投資を水素事業で実施する。エノモトは固体高分子型燃料電池(PEFC)向けに山梨大学と共同開発した新型セパレーターセルの中規模量産に乗りだす。政府が目標に掲げる2050年の温室効果ガス排出実質ゼロを達成するためには、水素の利用拡大が欠かせない。

トヨタ、FCV初の全面改良

トヨタ自動車のミライは2014年の初代モデル投入以来、初の全面改良となる。FCシステムを刷新し、最高出力を約2割高めたほか、航続距離も約3割増の約850キロメートルに延ばした。生産能力が年3000台に限られ販売が伸び悩んだ初代を踏まえ、基幹部品であるFCスタックなどの生産能力を現行比10倍の同3万台分に増強。量産体制を万全にし、FCVの普及拡大につなげる。

日本のほか、北米で12月中、欧州で21年春の投入を計画する。価格は710万―805万円(消費税込み)。ミライは初の量産型FCVとして発売され、累計約1万1000台を販売した。

岩谷産業、補給所増設へ積極投資

岩谷産業は液化水素プラントや水素ステーションの展開など、水素事業に力を入れてきた。水素活用の機運がさらに高まってきていることから、積極的な投資を継続する。

エノモト、セパレーターセル量産

エノモトは塩山工場(山梨県甲州市)の研究室に月産数万枚が可能な自動化ラインを構築中。2021年3月までにロボットを用いた自動搬送工程などを導入して稼働する。1分間当たり200ミリメートル四方のセル1枚を生産できる見込みだ。

同社のセパレーターセルはチタンや金メッキなど高価な素材の代わりにステンレスやニッケルメッキを使用。トラブル源となる水の排出対策として、汎用炭素繊維やエポキシ樹脂からなる多孔質の流路付きガス拡散層(GDL)を採用した。従来セルで必要だった金属パネル上への溝加工を不要にした。

部品点数の削減にもつながり、単セル厚さで0・955ミリメートルの薄型化を実現。同社では今後、セルの部品点数をほぼ半分までに削減するとともに、結露などの影響を抑えることで、従来より高出力化できるとしている。

新たなライン稼働でFCVなどへの実装に向けた研究開発を加速。FCスタックの組み立てにも本格的に着手し、「発電効率が高いFCの特性をエネファームやドローン向けなど、水素エネルギーの可能性追求に腰を据えて取り組む」(武内延公社長)考えだ。

政府「ロードマップ」推進 普及へコスト改善策主導

政府はカーボンニュートラルの実現に向け、水素利用の普及を目指す「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を推進している。自動車分野では、2025年までに燃料電池車(FCV)とハイブリッド車(HV)の価格差を現在の300万円程度から70万円程度に引き下げる。水素利用・調達量も一段と拡大し、普及を阻む最大の課題であるコストの改善策を主導する。

車分野では、25年までに1キロワット当たりの燃料電池価格を現在の約2万円から5000円に削減。水素貯蔵タンクを約70万円から30万円にし、車両価格を引き下げる。また水素ステーションの整備を促すため、整備費を25年に現在の4億6000万円から2億円にする。

水素の調達量も拡大する方向だ。将来は年500万―1000万トンの調達を想定しているが、脱炭素化には早期の達成が求められる。供給コストについてはタンクの大型化などを通じ、水素製造コストを30年に現在の1ノルマル立方メートル当たり100円程度から30円にする。

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