作業時間を短縮!野口工業が新設した多軸ロボ2台による自動溶接ラインの実力
野口工業(神奈川県綾瀬市、野口博永社長)は、本社工場近隣の第2工場に多軸ロボット2台による自動溶接ラインを新設した。加工対象物(ワーク)を裏返して両面を溶接できるよう、中空の治具やポジショナー2台を取り入れて作業を効率化した。既存のロボットラインで8分かかる作業を3分で行う。合わせて、信号灯の色をカメラで判別し稼働状況を把握する独自の生産管理システムも導入、ラインの効率運用にもつなげた。
新ライン「次世代型溶接ライン」設置に伴う投資額は約3000万円。綾瀬市の助成金1000万円を活用した。岩谷産業がロボットシステムを構築した。2020年に新規受注したトラックシート用フレームの溶接作業を担う。受注量が増えた際にはもう1ラインを隣に設置する。
新ラインの大きさは幅約6メートル、奥行き約3メートル。ロボットや溶接電源は安川電機製。仕上げなどの後工程を最小限に抑えるため、高性能のロボットを採用した。すでに15台が本社工場で稼働する他社製を考えていたが「システムの価格が倍になる」(野口社長)ため、溶接電源を含め安川電機製にした。
ワークを治具にセットすると、2台のロボットが約20カ所を溶接する。ポジショナーによりワークを自動で裏返し両面を溶接する。治具は2台で片側のワークを交換しながらもう片側でロボットが溶接作業できる。ロボットは直動装置により2台の治具それぞれの近くへ移動するため幅広い作業をこなせる。従来は1台のロボットに1人のオペレーターがついたが、新ラインはライン全体を1人で管理できるという。
トラックシートのフレームは左右で形が違う。現状は片側の治具で右側のフレーム、もう片側で左側という使い方だ。既存のロボットを使うと「右側を一気に作業して、次に左側を溶接する」(同)と面倒になる上、ワークを人手で裏返すため溶接品質上リスクになる。新ラインは左右同時に進められ進行管理も楽だ。しかも、ロボットの作業はプログラム次第で柔軟に対応可能。野口工業はトラックや特殊車両、発電機用部品の溶接加工を得意とする。いずれはシートフレーム以外にも活用したいという。
生産管理も効率的だ。野口工業は独自の生産管理システム「DAIQ(ダイク)」を持っており新ラインにも適用する。高価なカメラやセンサーを取り付けるとコストがかかる。そこで1万円程度の安価なカメラで複数のラインの情報を取得できるようにした。カメラがラインに設置した信号灯(パトライト)の色を読み取り、稼働中か、段取り替えかといった情報を把握する。ダイクは加工した部品の種類や量などを全社で共有できる。新ラインの稼働状況を組み合わせれば、より生産性の高い作業や、効率的な受注につなげられる。
今後は重量計で在庫やワークの重さを把握することで、在庫の数量を厳密に管理して発注管理の精度を高めたい意向だ。(相模支局長・石橋弘彰)
失敗パターンから学ぶ 製造業AI導入のカギ 〜AIプロジェクトのリベンジを目指して〜